人文科学系、主に哲学の専門用語の解説を中心とした雑記集

フロム『自由からの逃走』を読むための用語解説/ カント(1724-1804) p139 |『自由からの逃走』12

2022/08/06
 
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18世紀後半に活躍したドイツの哲学者。近代哲学を代表する最も重要な哲学者の一人に挙げられます。主著は『純粋理性批判』『実践理性批判』『判断力批判』『単なる理性の限界内における宗教』などです。全功績と影響を語ると一日では終わらないくらい功績を残した哲学者で、今の標準的な常識感覚というべき、例えば倫理学っていうのは禁止と義務について書かれたものだろうとか、人間は善悪を自分で選ぶが、悪い傾向性に流されそうになったとき、良心の責めというものがあり正しい選択ができる、という現代法学の前提、さらに自分の行為の責任は自分に帰責するなどそうした常識感覚はすべてカントに由来します。

ここではフロムの本書の文脈で必要なところをかいつまんで解説します。

カントは『実践理性批判』の中で、外部の制度や団体、権力者、さらには神などあらゆる外的権威に従って何かを決定することを仮象道徳、つまり偽の道徳だと批判します。カントがいうには、本当の道徳とは人間が悪に流れる傾向性を自分自身が持つ良心(理性)を働かせて正しい判断をすることです。外的権威は一切認めず、ただ内的権威たる良心こそが自由の根源であり、同時に道徳の源だとカントは言います。

フロムはこうした極端な考え方は、たとえ自分の中に良心があるとしても、言い過ぎだと考えるのです。外的権威であろうと内的権威であろうと、権威に従順に従おうとする態度こそナチズムを生み出したんだ、というようなことを主張します。こうした観点からいうと、カントも内的権威を認めることで、結果的にその内的権威への隷従を迫っているわけですから、ナチズムに対抗する武器としてカント的理性は使えない、とフロムはいいたいわけです。こうした文脈は『自由からの逃走』の後に出たアドルノとホルクハイマーの主著『啓蒙の弁証法』でも共有されています。



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