人文科学系、主に哲学の専門用語の解説を中心とした雑記集

相手に適切な言葉を投げかける|第78回大阪潤身読書会参加

 
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11月は地域のお祭りの延期などの都合で大阪潤身は参加せず、12月25日クリスマスの日に大阪北新地のステーキハウス听(ポンド)にて第78回となる大阪潤身読書会が行われたので参加してまいりました。
孔子の言行録である『論語』を1章句ずつ読み、そこでの気づきや学びを語り合う読書会でして、かれこれぼくは1年半以上お世話になっている読書会です。
今回も前回参加時と引き続き、『吉川論語』をベースに先進第十一の3つの章句を予習して臨みました。
実際、今回の読書会で進んだのは先進第十一篇の21、22節の二つだけでした。しかし、主査の清水さんの『論語』に思いを入れるようになった章句が含まれていたので、今まででも最も盛り上がった会になったような印象を勝手ながら受けました。
特に二十二節の章句で気を付けるとよいことがたくさん詰まっている気がしましたので、そちらの白文だけ取り上げます。日本語訳などはご自分でお調べください。
先進第十一・二十二
子路問聞斯行諸子曰有父兄在如之何其聞斯行之冉有問聞斯行諸子曰聞斯行之公西華曰由也問聞斯行諸子曰有父兄在求也問聞斯行諸子曰聞斯行之赤也惑敢問子曰求也退故進之由也兼人故退之
子路と冉有(ぜんゆう)という二人の弟子が、違う場面にて孔子に対して同じある質問をします。その質問とは、「すぐに行動すべきでしょうか」という質問です。二人に対する孔子の答えは全く別の答えを返します。子路には「父上や兄上にまず聞いてから行動せよ」、冉有には「すぐ行動せよ」と答えたのです。
矛盾に捉え、一貫性に反した言動だと理解した公西華という孔子の弟子は、「二人に違う答えをした真意は何ですか」と問います。
孔子は答えます。「冉有は引っ込み思案だからすぐに行動したほうが良いから、そのとおりに進めたんだよ。子路は人と一緒に何かをしたほうがうまくいくことが多いから、すぐに行動しないように言ったんだ」。
本文はここで終わります。
ここで孔子が二人にした答えは、言葉尻だけを見ていると正反対のことを言っているように思えるけれども、どちらも弟子の特質を知り抜いて最もベストの方策を提言したものだった、ということだったのです。
これはこう言いかえることもできます。弟子たちの弱点が目立つ行動指針より、利点が目立つ行動指針を孔子は弟子に伝えるのです。
言ってみればこれは孔子の仁の現れの一側面でしょう。本当に相手のためになることを考えて相手に言葉を投げかける形での仁です。
こうした対応はどちらも元は仏教のことばですが、対機説法や応病与薬という言葉が使われます。真の相手にためになる行動や言葉をその状況においてなす、というような意味です。
ぼくたちは一貫性と聞くと、違う人に違う言葉をかけることは一貫性に反していると直感的に判断してしまいます。しかし、そういう表層上の一貫性ではなく、ここでいう孔子の仁(という一貫性)に基づいた言動や仏の慈悲に基づいた行動といったものは、より高位の一貫性と考える余地があるように思いました。
実際形だけはいくら正論で誰にでも通じている風のことばをかけてくる人は多いものです。実際そういうことばをかけるのは、かける人自体はとても楽です。でもそんなことばは私の思いにささることは少ないでしょうし、行動変容効果も全くありやしません。
ぼくも形式だけの一貫性に陥らずに、その場での最適のアドバイスや答えと行動を常に追い求めていく姿勢を頭の片隅において日々過ごしていきたいです。
とても考えさせる一文だったので年の瀬のここに記します。 2022.12.30

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