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社会は進化するー社会進化論を理解するために必要な5つのポイント

 
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どうも、哲学エヴァンジェリスト高橋聡です。

前回は社会契約説について考えました。社会契約説はあくまでも自然状態が完全な仮定であり、国家や社会の解釈もどのような契約を行うかは論者によって変わってきました。そこで具体的な社会を見ていってそこで社会が進化していくものではないかと気づいた人たちがいます。古くはモンテスキュー、サン=シモンなどがおり、タイラーやデュルケムもこの社会進化思想を唱えました。早速モンテスキューから見ていきましょう。

モンテスキューの社会哲学

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モンテスキューは社会の比較研究を最初に行った人物です。ルソーが習俗、法などの社会制度がどうあるべきであるかを論じたのに対して、モンテスキューは客観的事物として社会制度がどうあるのかを比較を使って研究しました。ある社会と別の社会の比較を行うわけですから、こちらの社会はどう進んでいるか、あるいはどう劣っているかを論ずることになります。つまりモンテスキューは社会制度を比較を通じて分析した最初の人物だったと言えます。『法の精神』では人類社会は三段階に発展すると述べます。狩猟社会である野蛮の段階、遊牧社会である未開の段階、そして文明社会というふうに発展するのです。生活形態の違いがモンテスキューの発展図式の内容と絡んできます。

サン=シモンの三段発展説

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サン=シモンとコントによれば、社会は次の3つの段階を経て発展していくといいます。神学的段階→形而上学的段階→科学的段階です。まず神学的段階とは、宗教が支配する社会。形而上学的段階とは、哲学によって世界を理解する段階であり、最後の科学的段階は現代であり、科学が最重視される社会のことです。サン=シモンやコントの発展図式では学問が社会進歩の要点だと考えられたのです。

サン=シモンは『産業者の教理問答』という著作を残しています。かかる科学の時代に、産業者が中心となって産業社会を作るべきである、と主張しています。

タイラーの三段階進化説

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社会人類学の父と言われ、社会人類学を創始したのがイギリスの人類学者タイラーです。タイラーによれば、社会は西洋社会を頂点とした三段階の進化を行う、と言います。アニミズム(タイラーの造語で、精霊崇拝のこと)を信じる野蛮段階→多神教を信じる未開段階→一神教を信じる文明段階へと進む、とタイラーは指摘します。タイラーの図式では宗教がその判断材料になっています。

モルガンの三段階進化説

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タイラーとほぼ同時期にアメリカで人類学の父とされたのがモルガンです。モルガンの進化説はこれまでの進歩思想、進化思想と比べると体系だって説明されており、小分類も非常に細かいのが特徴です。やはりタイラーと同じく、野蛮段階→未開段階→文明段階へと進むと述べたわけですが、タイラーが宗教が判断材料にしたのに対して、モルガンは親族形態や家族を特に重視しました。モルガンの親族研究はレヴィ=ストロースが評価したりしていますが、かといってこの進化仮説は現在支持する人はほとんどいません。

古典進化説の弱点

今まで述べた4人の社会発展図式は西洋社会を頂点としたモデルによって構築されたモデルです。その分かりやすい図式は評価されますが、現代では欠陥があり賛同者がほとんどいないのが現状です。

批判点は次の4つが大きいもの。
  1. すべての社会が同じ歴史的過程を経て西洋社会段階へと進む単系進化説の断定した点
  2. 西洋社会中心主義、自民族中心主義(エスノセントリズム)に陥っている点
  3. 社会発展の尺度が物質に偏っている点
  4. 社会進化論の前提となる条件がそもそも間違っていることが多い点
次に述べるフランス社会学の祖デュルケムは法を基準として人類学者とは違う進化の側面を発見したのでした。

デュルケム『社会分業論』の発展仮説

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デュルケムの処女作『社会分業論』では法」を基準として、その法の中身が二つに分類できると指摘しています。

その中身とはずばり、制裁法復原法です。制裁法とは刑法を中心とするその名前の通り、ある行為をしたから罰として制裁を科す法律というものです。古代バビロンの法、目には目を、歯には歯をもって償うというようなものです。あるいは死刑制度もこの制裁法の一種です。復原法とは民法を中心とした、ある損害を起こし、その損害を起こした本人がその損害を補填するようにする法律のことです。元に戻す法律という意味です。30万円のバイクを壊したから、30万円分の補填をする。そのような行為を促すのが復原法です。

制裁法が多くを占める社会を環節的社会復原法が多くを占める社会を非環節的社会といい、機械的連帯有機的連帯がそれぞれを特徴付ける連帯です。機械的連帯とは、皆が役割を持ち、ほとんど同じ仕事や活動をし、それだけの画一的な連帯のことです。対して有機的連帯とは、皆がそれぞれ別の役割を持ち、全く違う仕事、活動をするにもかかわらず、個人を尊重するようになってきた連帯のことです。

デュルケムが法に着目した理由がここでわかります。昔、法は個人の体を傷つけたり、拘束したりするものでした。それが個人の尊重が人々の心に根ざすにつれ、求められる法が変化し、損害を与えたらその損害を補填するだけでいい法律が増えてきたのです。それに呼応するように、個人を尊重文化が根付いているわけです。その特徴が有機的連帯です。

まとめ

それぞれの人の発展図式を考えましょう。

モンテスキューは生活形態の違いを、サン=シモンは学問を、タイラーは宗教を、モルガンは親族形態を、デュルケムは法を基準として発展の仮説を立てました。様々な動機をみんな考えたわけですが、ぼくはデュルケムの発展図式が一番しっくりきます。人々の個人の尊重度合いが進むにつれ、有機的連帯がますます増し、自由な職業選択や行動ができるようになる。あなたはどう感じましたか?

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