社会学ってどんな学問なの?社会学の4つの特徴を知ろう

どうも哲学エバジェリスト高橋 聡です。前回の更新からだいぶ日が空いてしまいました。今はいろんな本を読んでおりますが、アウトプットも大事なのでブログにも読んだ本から得られたものを残していきます。
最近『Do!ソシオロジー 現代日本を社会学で診る』という本を読んでいます。この本の序章の内容をあなたに役立つようにとてもわかりやすく、説明します。では早速、見ていきましょう。
社会学の目標
社会学初学者の当面の目標とすべきなのはなんでしょうか。これはどの学問についてもいえるのですが、初学者が最初にやるべきことは、その学問固有の思考法を身につけることです。哲学なら哲学的思考、言語学なら言語学的思考、文化人類学なら文化人類学的思考、歴史学なら歴史学的思考を身につけることで、その学問に近づきやすくなります。
だから次のように言えます。社会学初学者の最初の目標はずばり、社会学的思考を習得することです。
二つの方法で社会学的思考を身につける
では具体的にはどのように社会学的思考を習得できるでしょうか。それには二つの方法があります。一つは社会学の基礎概念の学習を通して、社会学的思考を習得することができます。具体的にいえば、社会学の入門書、基本書、古典、研究書といった類の本を読み、トレーニングすることで社会学的思考が身につきます。
もうひとつは、現代社会の分析を行うことで、社会学的思考を習得することができます。現代社会のあらゆる点を課題として考え、考えるに値することを社会学の概念を用いて分析することで、社会学的思考が身につくのです。こちらはどちらかというと応用編といえるでしょうが、具体的な社会の分析をしないと基礎概念を使いこなすことはできません。その点でいえば、この二つの方法は相互補完的な関係にあります。
では次に、社会学の特徴、4つを見ていきましょう。
社会学の4つの特徴
社会学は社会科学である
社会学はずばり社会科学に分類されます。社会科学とは社会を研究対象とする学問のことで、社会学の他に、文化人類学や法学、経済学などがあります。心理学なども社会科学ですね。そもそも科学の分類は3つに分けることが一般的です。社会科学、人文科学、自然科学の3つです。社会科学と他の二つの科学分類との違いをおさえておきましょう。
社会科学と人文科学との違い
社会科学と人文科学との最大の違いは、文献学的方法を重視するかしないかです。人文科学のほうが文献学的方法を特に重視し、文献批判を忠実に行おうとします。対して社会科学は、調査やフィールドワーク、実験などの実証的な方法を重視します。実証的な方法を駆使して、社会的事実を説明しようとするのです。社会科学と自然科学との違い
自然科学の分析対象は数値化、データ化することができるものが大変多いため、実験を通した法則の定立や検証が比較的容易です。ところが社会科学の分析対象は、社会そのものや社会現象なので、一意なデータ化が難しく、なおかつ社会自体も変動するため、法則を立てて理論や命題を発展させることが難しいのです。社会学は個人と社会の相互関係を分析対象とする学問である
社会学は近代西欧に固有の社会観から生まれたものであるといえます。個人と社会という二つのキーワードが重視される時代、それが近代西欧なのです。個人の行為の分析を通して、社会と人間を理解する
社会学はまず、個人の行為の分析を通して、その背後で働く社会的な影響力、そして人間がどう考え動くかを考察します。社会と人間の理解に努めるのが社会学であり、社会と人間とがダイナミックに影響しあっていることを示そうとするのです。この立場に立った古典社会学の名著といえば、ずばりマックス・ウェーバーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』です。この著作も今後紹介しようと思います。社会そのものが個人に及ぼす影響を分析する
対して、社会学ではもう一つの方法で分析が行われることがあります。個人の行為からはじまって、社会的な相互作用などを見ていくアプローチ(方法論的個人主義)が先ほどの項目で見た方法ですが、逆に社会を始点として個人を分析するアプローチ(方法論的社会主義)もあります。後者の立場にたった古典社会学の名著といえば、ずばりカール・マルクスの『資本論』やエミール・デュルケムの『社会分業論』などが挙げられます。ミクロレベル・メゾレベル・マクロレベルの統合理論
ミクロレベル、つまり行為の水準と、メゾレベル、集団や組織の水準、マクロレベル、全体社会の水準という三つのレベルを統合した理論を目指すのが社会学の究極の目的があります。社会的現実と常に向き合う学問
社会学は、社会的な現実から目を背けては成り立ちません。つまり社会的な現実を直視し、そこから得られた経験などから分析、語りを行う必要があるのです。社会的な現実とはつまり、その時代をいきる社会学者(あなたのこと)にとっての現実であり、どおりに現在なのです。現在(いま)を直視して、問題を掘り起こし、分析してみせるのが社会学の醍醐味の一つです。社会学は事実判断と価値判断を峻別するが、どちらも重視する
分析的レベルの記述は事実判断である
社会学的記述は、分析的レベルの記述と規範的レベルの記述の二つに大別できます。規範的レベルは後の項目で説明するとして、分析的レベルの記述とは何を指すのかを見ましょう。分析的レベルとは、社会事象を記述し、その社会事象の因果関係やメカニズムを分析するレベルのことです。分析的レベルは、事実判断のレベルともいえます。事実判断とは、同語反復的なのですが、社会事象を詳しく分析した記述のことです。できるだけ客観的な視点から書かれたものだと思ってもらえばいいです。「こうだ」「こう見ることができる」というレベルでの記述を思い描いてください。
規範的レベルの記述は価値判断である
上記で説明した分析的レベルの記述に対して、規範的レベルの記述というものもあります。規範的レベルの記述とは何を指すのでしょうか。規範的ということは、「こうあるべきだ」「こうしたほうがいい」という価値判断を含んだもの、という意味です。つまり規範的レベルでの記述とは、社会制度が有効か無効か、正当か不当かなどを検討したり、社会事象に対する政策的判断を下すレベルのことです。価値判断のレベルともいえます。社会事象が一定の価値に照らして望ましいか、という判断が価値判断なのです。
ウェーバーはこの二つを峻別し、事実判断のみを社会学の対象だと考えた
ドイツの古典社会学者、マックス・ウェーバーは事実判断と価値判断とを峻別し、特に事実判断のみを社会学の対象だと考えました(ウェーバー『職業としての学問』)。学者は事実のみを提供し、価値判断はそれを用いる人たち、例えば政治家などに委ねるべきだと考えたのです。実際は事実判断と価値判断のどちらも社会学に要請される
ところが実際、この事実判断と価値判断とを峻別させておくというのは、難しい問題です。仮に峻別できたとしても、事実として示したデータの一部だけが切り取られて使われたりして価値判断される例もありますし、研究者自体が無意識的、意識的に望ましいと思うことを完全には排除できない問題もあります。今日では、事実判断のみではなく、価値判断もまた、社会学者に要請される仕事の一つであるともいえるでしょう。ただし、前者の事実判断重視の姿勢は崩さないでいないといけません。
社会学の研究対象は「第1の近代から第2の近代へ」
「第1の近代から第2の近代」に似たフレーズとして、「モダンからポストモダンへ」「単純な近代から再帰的近代へ」というフレーズがあります。ここではベックの再帰的近代化についてみましょう。ベックのいう再帰的近代化とは、近代化によって生み出された帰結を社会の中に取り込んで、変化の方向性を修正する近代化のことです。自己言及的、自己循環的な近代化とも言えます。簡単に言えば、近代化によって生み出された市民社会や核家族、階級社会、国民国家自体を近代化しているのが再帰的近代化です。地域社会の終焉の危機、家族崩壊の危機、グローバリゼーションなどがその産物です。
まとめ
社会学初学者の当面の目標は、社会学的思考を身につけることです。そのためには社会学の基礎概念の学習を通じて身につける方法と、現実社会の分析を行って身につける方法の二つがありました。社会学の4つの特徴とは、社会学とは社会科学であること、社会学は社会と個人を分析対象とすること、社会学では事実判断と価値判断を分けること、今は第二の近代と呼ぶべき時代を社会学は対象としていることです。次回は個人化、孤人化、親密性の問題についてみましょう。