人文科学系、主に哲学の専門用語の解説を中心とした雑記集

社会学について11〜現象学的社会学

2018/02/25
 
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どうも哲学エヴァンジェリスト高橋 聡です。今日はアルフレッド・シュッツの現象学的社会学について見ていきましょう。

現象学的社会学

アルフレッド・シュッツはオーストリアからアメリカに亡命した社会学者でフッサールの現象学に学びながら独自の現象学的社会学を提起し、ハーバーマスやルーマンに影響を与えました。

パーソンズとの論争

シュッツは「主観的観点」とは何か、という問題についてパーソンズと論争を展開しました。シュッツによれば、パーソンズの主意主義的行為理論は研究者(観察者)が行為者自身が持っていると考えられる主観的な意味を科学的に解釈するという立場に立っています。ところが、シュッツの考える主観的観点とは、研究者(観察者)の観点ではなく、行為者地震の主観的な観点だというのです。

このことをウェーバーの「動機」に関する定義にもどって考えてみましょう。ウェーバーは「動機」について「行為者自身や観察者が、ある行動の当然の理由と考えるような意味関連」と述べていて、動機を抱く主体として「行為者自身」と「観察者」の二つをあげました。このうち「行為者自身」の動機に軸足をおいたのがシュッツで、「観察者」の動機に軸足をおいたのがパーソンズです。

社会学が科学である以上、どちらの立場が客観的といえるのか、とても重要な論点です。

この客観性についてパーソンズのやり方では、観察者の立場に立つ、つまり行為者の「外に立つ」ことが客観性だと考えていますが、シュッツでは行為者の「内に立つ」ことが客観性のタンポンあると考えました。なぜならシュッツにおいては客観性とは「真実の」「正しい」理解という意味で捉えられているからです。ただシュッツの客観性に関する議論はもっと深い意味があります。後日ガーフィンケルの社会学について学ぶ際に見ていきましょう。

生活世界

シュッツはフッサールの考えた生活世界という概念を社会学に持ち込みました。生活世界とは、日常生活を送る人々(研究者ではない行為者)が主観的に経験している意味世界のことです。研究者が論ずる科学的認識の世界とは異なる世界です。

このことを説明するために、医者が感じる世界と自閉症や認知症の患者が感じる世界との違うを考えてみましょう。医者は患者の立場になって患者の世界を想像することはできるかもしれませんが、健常者である医者は結局患者の認識する世界とは異なる世界に生きているのです。このような関係を科学者と社会現象との関係で考えると、医者の世界が科学者の見る世界で、患者の世界が生活世界なのです。

この生活世界を論じたエトムント・フッサールは1930年代当時の論理実証主義をガリレオ的世界観に基づいた自然主義あるいは客観主義として批判しました。科学者の身についた知識や理論は「理念の衣」を身にまとったようなもので、そのためにかえって一般の人々の生活世界を見えづらくしていると考えたのです。

多元的現実

多元的現実とは現実世界は一つではなく、複数あるという多元主義に音づいて見た現実のことです。シュッツによれば、生活世界は人間が意味を付与して相互主観的に作り上げている世界で、そのため世界はその時の状況によってことなる現実となります。

たとえば夢や空想も体験して意味付けているという点では夢や空想から冷めた日常の世界と同じように独立した現実的世界を形成していると考えます。芸術、宗教、科学なども独自の意味領域を形成していて、その世界で異なる意味世界を体験するためシュッツは独立した多元的現実だと考えました。

同じものであっても、多元的現実では異なるものにあることがあります。たとえば石は武器になったり、庭園の鑑賞材料になったりするのです。そうした多元的現実を解釈する選択基準をレリヴァンスと呼びました。

シュッツの社会学はバーガーやルックマンによって引き継がれ、日常生活世界はいかにして構成されるかを主要テーマとした現象学的社会学を形成しました。

現象学的社会学の困難性

すでんシュッツ自身も述べていることですが、現象学的社会がは少なくとも二つの困難を内包しています。

第一に他人が他人の主観的な世界に入り込んで、その意味を理解することは難しいという点です。

第二に社会の中にいる研究者が日常世界の外部に立って客観的に観察することは難しいということです。

まとめ

シュッツの現象学的社会学はとても魅力的な社会学です。とはいえその困難性からかあまり進展した感じは受けません。

生活世界を直視することを指すれない態度でずっといたいですね!

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