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心理学前史2|進化論・精神物理学・大脳生理学

 
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どうもこんばんは、高橋聡です。

このブログではここ数回、20世紀前半までの心理学の大まかな流れについてみてきました。大きく4つの時代に分けて、解説をしました。次の4つの時代でしたね。

  1. 前心理学の歴史1|アリストテレス・ロック・ヴォルフ・カント
  2. 前心理学の歴史2|進化論・精神物理学・大脳生理学
  3. ヴントと近代心理学の成立
  4. 心理学の3つの潮流|ゲシュタルト心理学・行動主義・精神分析

このうち、前心理学の歴史2を今回は見ていきたいと思います。

前回の記事は次のリンクから飛ぶことができます。

心理学の前段階として古代から19世紀くらいまでの内容を見てきました。興味あれば前回の記事も読んでみてください。

では今回の内容に入っていきましょう。

心理学成立直前に登場した3つの学問

心理学の成立はヴントがライプツィヒ大学で心理学研究室を開設した1879年が最初の年だとされることが多いです。その20年ほど前から進化論精神物理学大脳生理学などに対する関心が高まりました。この三つの学問が近代心理学の成立に与えた影響は非常に大きいです。それではそれぞれどのような影響があったのか、簡単にみていきましょう。

ダーウィンの進化論

1859年、ダーウィン『種の起源』を出版し、進化論の考えを世に問いました。ダーウィンの進化論は種が自然選択によって環境に適応した物だけが生存するように変化、進化するという考え方です。

ダーウィンの友人で比較解剖学者のロマーニズは、動物と人間の心を比較して考える比較心理学を展開しました。この比較心理学成立の背景には、動物と人間との絶対的差異を強調するキリスト教的価値観からダーウィンが唱えた進化論によって解放され、動物にもまた心があると考える人が出てきたことがあります。ロマーニズは、さまざまな動物の知的能力は人間の知的能力と質的な違いがないと結論づけました。

これに対して、イギリスの心理学者モーガンはモーガンの公準モーガンの節約律とも呼ばれる)を提唱しました。モーガンの公準は、特に動物の心的能力を解釈する際には、できるだけ理論を節約しながら最も低次な知的能力で導けるものがあれば、そちらを適用することを要請するものです。

こうしたモーガンの公準は動物の知的能力、心的能力の分析に実験的方法を推進するきっかけとなりました。

精神物理学

ライプツィヒ大学の生理学教授、ウェーバーは感覚の問題に関心を持ちました。そして、重さの違いの弁別に関するウェーバーの法則を発見しました。ウェーバーの法則とは、刺激の量的差異に関する弁別閾(ΔI)は、刺激量(I)に比例して増大するという事実を指摘した経験的法則です。言い換えれば、同一個人の同一感覚領域ならば、ΔI/Iの値はほぼ一定になるということです。

具体例を出して説明すると、100gと102gの違いがなんとかわかるなら、200gと204gがなんとか区別できるということがいえるんです。100gで2gの差異が識別できたら、200gでは4g、400gでは8gの差異が識別されるギリギリの値だと推測できるというのが、この法則でいえることなんですね。

ある新しい概念が提唱されると、それがブレークスルーとなってさらに異なる概念が提唱される。そういうことが学問、特に心理学だとよくあります。このウェーバーの法則はフェヒナーの法則の基礎となりました。

ウェーバー、そしてヴントと同じライプツィヒ大学の物理学教授だったフェヒナーは、感覚の閾について、絶対閾ということを提唱しました。

フェヒナーの法則とは、刺激の強度と感覚の主観的大きさとの間の関係に関する法則です。フェヒナーの法則を数式で表すと、次のようになります。

E=KlogI+C

フェヒナーの法則は感覚(E)に対する対数関数の形式となります。つまり、フェヒナーは感覚を対象にしたことを明示しました。感覚の大きさは刺激の強度の対数に比例して増大する、というのがフェヒナーの法則の要点です。ウェーバーは重さの感知に関して法則を発見しましたが、フェヒナーはそれを拡張して感覚一般の大きさをどう求めることができるのか、ということを明示した点で進みました。フェヒナーは光や音を初めて感じた時の値を刺激閾と呼びました。

フェヒナーが主観的な感覚を実験して確認した学問がまさしく精神物理学という学問です。フェヒナーが用いた実験がヴントの心理学の実験へ発展したといえるわけです。この点で、実験心理学は精神物理学の後継学問だと思います。

大脳生理学

脳と心の関係を探求する傾向が心理学では徐々に強まっていっています。
19世紀後半にはブローカウェルニッケによる言語中枢の発見フリッチュヒッツィヒ運動皮質の研究などによって大脳各部がになっている機能が次々と報告されて、大脳に関する知識が拡大することになりました。こうした大脳生理学の発展が心理学に大きな影響を与えました。

以上、今回は心理学成立直前の三つの学問のついて見ていきました。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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