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フロム『自由からの逃走』を読むための用語解説/ 自由の分類:「~への自由」と「~からの自由」 p42 |『自由からの逃走』8

 
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フロムは自由を二種類に分類します。「~からの自由」は組織や圧力、束縛からの解放で得た自由です。自分が主体的に選び取るニュアンスが少ないため、消極的自由とも呼ばれます。たいして「~への自由」とは自分自身が積極的に自由を行使してその対象を得ようとするため、積極的自由と呼ばれます。

自由の分類でいうと、freedomとlibertyという風に分けることもあります。freedomはもともと権利として持っている与えられた自由のことで、libertyは能動的に自由をつかみに取りにいくときの自由です。フロムの分類によると、~への自由がliberty、~からの自由がfreedomとぱっと見、対応するように思えますが、実際にはそう簡単なものではありません。何らかの権力から自由にできなかった時代においては、政治的自由にしろ、経済的自由にしろ、人々がその権力から自由を勝ち取って得る、という点で「~への自由」、libertyであるでしょう。そうして実際に人々が自由を勝ち取って得た時点においては、自由は積極的自由であり、同時にlibertyです。ところが権利として人々がこの自由を享受できるようになったその瞬間より後に生まれた子供たちや子孫たちにとっては、それはすでに所与の権利として自由が存在するわけです。そういうわけですから、人々がつかみ取った(例えばフランス革命、アメリカ独立戦争などの終結)時点より後に生まれた子孫たちにとって、自由は「~からの自由」、消極的自由、freedomになってしまうのです。このように歴史的にみればいつの時点で見るかで実質的には同じ自由でも、自由の分類は変わってしまう点に留意しましょう。

この分類を敷衍して『自由論』を発表したのがイギリスの政治哲学者アイザリア・バーリンです。バーリンは二種類の自由の原理の矛盾を指摘します。すなわち、積極的自由は消極的自由を破壊する可能性があって、結果的にこの二つの自由の原理は対立する、といいます。なぜなら民主主義においては多数者が積極的自由を主張することで、結果的に少数者などが持つ消極的自由を侵害する危険性があります。だからこそバーリンは消極的自由こそ権利として保証するべきだ、ということを主張しています。

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