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「人間の条件」をふりかえって考えてみる|第133回人間塾in関西課題本 ハンナ・アレント『人間の条件』を読んで1

 
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どうもおはようございます、高橋聡です。

人間塾in関西への参加

一年ほど前から人間塾in関西という読書会に参加しています。今回は先週土曜日の2月4日に京都会場で人間塾がありましたので、そちらに参加してきました。

今回の課題本はアレントの『人間の条件』です。アレントはハイデガーに師事したドイツ出身のユダヤ系の女性哲学者・政治学者です。アレントの代表作はこの『人間の条件』と『全体主義の起源』という二つの本です。どちらも読みづらいことで有名だったので本は持っていたけど、読んだことがなかったのでいい機会にがっつり読んでみようと思って、今回参加しました。

1か月前から読み進めても、文庫の上に小さい文字でやたら文字が詰まっているので読むのが進まない、進まない。結果的に今回の『人間の条件』はギリギリ2周しかできませんでした。

人間塾ではいつも塾頭が2つのお題を設定してくださって、それに沿って話をする形となります。

今回このブログではお題1をテーマに考えてみたいと思います。

お題① アレントが唱える「人間の条件」とは何でしょうか?それに対してご自身はどう感じますか?

アレントは本書『人間の条件』で考えることは、私たちが行っていることを考えることである、と言っています。またこれは人間の条件の基礎的要素を明確にすることであるともいいます。人間の条件の基礎的要素とは、人間が持つ3つの活動力から構成されます。3つの活動力とは次の3つです。

  1. 労働Labor
  2. 仕事Work
  3. 活動Action

一つずつ見ていきましょう。

労働

労働Laborは人間が生きていくために必要なものです。労働は食物やその他生活必需品を消費する事実と対応します。基本的に労働で生み出されたものはすぐ消費されてなくなります。

労働の人間的条件とは、ずばり生命です。生命が生き延びるためにやっていることですから、動物が狩りをしたりするのと同じようなイメージでアレントは労働をとらえている節があります。

人間という種を存続させるために必要なライスワーク全般が労働であり、ほとんどの経済活動は今日、ここに含まれると思います。

これは人間の自然的な側面を表しているので、労働者は「労働する動物」と本書では表現されています。

仕事

仕事Workは作品を残すことが何より大事です。アート、芸術、音楽、建築などがここでイメージできると思います。自然のものを人工物に変換します。

そうした人工物は後代に残ることを前提に作られることが多いですから、仕事でつくられた作品は耐久性や永続性を特徴とします。

仕事の人間的条件は世界性、という単語で表すことができます。人間が自然を人工的構築物を作ってできるのが世界であるとイメージするとよいでしょう。

人の有限性と物の永続性の対比がされ、人間は世界という永続性のある環境を作り上げるのです。その代表作が都市や国家でしょう。

活動

活動Actionは人と人との間で行われる唯一の活動力です。政治活動や哲学、言論がこの活動の範疇に入ってくるんだろうと思います。

公的な場で行われる対話や討論もまた、活動に近いと思います。

この活動の人間的条件は、多数の人間がそこに暮らしているという事実です。

人間の集まるところにしか活動はありません。その意味で、古代ギリシャ語でいうノモスという言葉が活動の領域だと言えます。

同様に、ポリスという場が公的領域として活動と言論が行われるところでもありました。

各活動力の関係

古代ギリシャでは、活動>仕事>労働と重視されるものが現代とは違っていました。現代では当然労働が一番大きいものとしてあるわけですが、古代ギリシャでは労働は奴隷の仕事です。

私的領域=家族の中では、労働がなされますが、公的領域=ポリスの場で労働のことが取り出されることはなく、活動と言論の話がなされることがほとんどです。

このように、古代ギリシャでは私的領域と公的領域の区分がはっきりとされていました。

ところが古代ローマ以降、社会という領域が新しく出てきます。社会が大きくなればなるほど、労働と活動の立場が反転していき、近代になれば社会が圧倒的優位になり、労働が重視され、活動が軽視されるようになるのです。

社会は家族の拡張のような特徴を持つ、とアレントは指摘しております。これは面白い指摘ですが、的を射た部分も多い独創的な考え方だと思います。

アレントは活動の領域を完全優位に戻せ、と言っているわけではないでしょうが、活動の領域ももう少し顧みて、そうしたところの話し合い、討論、対話といったものをちゃんと社会的にやっていく必要性を訴えていると思います。

人間の条件とは、まさにこの活動と仕事と労働の三つ巴をバランスよく、個々人が調和のとれた生き方ができる、ということをさしていると僕には思えます。

アレントの文章を読む限り、圧倒的に労働偏重で、活動が不足しすぎてるから、活動にもっと注力しないといけない、というアレントの言いたいことというか、主張は見えてきます。

人間塾は活動の場だな、ということを確認しつつ、ここでは筆をおこうと思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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