ルサンチマン|哲学の用語解説
どうもこんばんは、高橋聡です。だいぶ暖かくはなってきましたけど、寒い日もまだありますね。季節の変わり目なので、風邪やコロナなど引かないように気をつけましょう。といっても、大阪は激増しているので、本当に気をつけないといけませんね。
前回の記事|ニヒリズム
ではさっそく前回の記事についてみていきましょう。前回の記事ではニヒリズムというニーチェの哲学概念について考察しました。虚無主義とも訳されるニヒリズムは、近代ヨーロッパに巣食う病巣だとニーチェは断じ、その解決策はニヒリズムをさらに徹底するしかないと説いたのです。以下にリンクを貼っておきますので、興味ある方はぜひみてくださいね。ルサンチマン
ルサンチマンという言葉
本日はルサンチマンという言葉について取り上げて考察したいと思っています。ルサンチマン(ressentiment)とは、とは恨みや怨恨をあらわすフランス語です。そのルサンチマンを、ニーチェが弱者が無力さから強者を憎悪して、復讐しようとする心理をあらわす用語として用いました。ニーチェが著作『道徳の系譜』で用いて哲学的に注目されるようになりました。わかりやすくいうと、ルサンチマンとは弱者の強者に対する弱さから来る復讐心といった意味です。貴族道徳と奴隷道徳
強者(貴族)は自己を肯定して、能動的に「よい」と言い表します。まだキリスト教的価値観が成立する以前には、このように強者が強くて正しいと認めたものが「よい」と言われて考えられていたものだったのです。逆に「悪い」とは、弱くて自己を肯定できないものをさしていました。この価値観を貴族道徳とニーチェは呼んでいます。ところがこれに恨みを抱いた弱者(奴隷)は現実世界では強者の考え方にはとても敵わないため、弱者の心の中でルサンチマンが生じて、まず心の中で「よい」と「悪い」の価値を完全に逆転させます。そして強者を「悪い」人だと考えることで、道徳的に復讐するのです。これを奴隷道徳とニーチェは呼びました。
キリスト教道徳
初めは心の中で奴隷道徳を抱いていただけですが、弱者は強者に現実世界で復讐するようになり、奴隷道徳を実際の世界の持ち込み始めます。そうしたルサンチマンの具現化の最たるものだとニーチェが断言するのが、キリスト教とその道徳なのです。公正や謙虚などもともと弱さの特質とみなされていたものが良いものとして重視されるようになったのです。キリスト教や社会主義が説く同情や平等、博愛などの理想は、弱者の強者への反感、嫌悪、憎悪、すなわちルサンチマンが隠されているのです。ルサンチマン講評
ここでまとめると、強者が強いものはよい、弱いものは悪い、という価値観である貴族道徳をもっていました。これにルサンチマンを感じた弱者たちは、このよい=強い/悪い=弱いという価値観を完全に逆転させ、よい=弱い/悪い=強いという価値観である奴隷道徳を作り上げました。貴族道徳がルサンチマンによって奴隷道徳に変容したとも言えるでしょう。そしてその奴隷道徳を世界的に広めたのがキリスト教とその道徳なのです。だからニーチェは哲学を始めてから一貫してキリスト教を批判します。ニーチェにとって生きることとは、事実をあるがままに受け入れ、その上で自分の人生を全て肯定し、さらに力への意志を発揮して力強く生きるということなのです。その本来的な生と対立するキリスト教道徳はニーチェによって批判されなければならないものだったのです。以上、今回はルサンチマンについて考えてきました。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
高橋聡記す