人文科学系、主に哲学の専門用語の解説を中心とした雑記集

過去の投稿シリーズ:石川文康『カント入門』 第七章メモ

 
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こんばんは!
草の根平和推進者 平高橋聡です。
過去の投稿シリーズです。

2011年04月14日14:35 mixi
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●道徳は不可避的に宗教にいたる 
 
「批判の時代」―宗教も批判の例外ではない 
 
そのため『単なる理性の限界内における宗教』(=『宗教論』)をあらわす。
仮象を批判し、真理をつきとめる、三批判書と同じ態度がとられている。

 
「道徳は不可避的に宗教にいたる」は、道徳が将来的に宗教に通じるという意味であって、
今現在の道徳が宗教を必要としているという意味ではない。
それゆえ道徳が道徳として自律しているという主張と、
それが宗教へ通じるという主張はなんら衝突するものではない。

 
しかし逆は不可能である。宗教は必ず道徳を通る必要があるのだ。
言い換えると、道徳がない宗教は偽りの宗教であり、仮象宗教だというわけである。
その意味で、カントの宗教論においても、仮象批判としての批判哲学の精神が貫かれている。

 
幸福の追求は間接的な義務であり、幸福は願わしきものとして広義における「善」にほかならない。
完全な善は徳と幸福の両方で構成されなければならない。
このような徳と幸福の一致を「最高善」と呼ぶ。
実践理性は依然としてとくが最高善の第一条件であり、
幸福はあくまでもその第二条件にすぎないことを教える。 

 
道徳的に完全無欠な人間となるのはこの世では不可能である。
しかし、理性が実現不可能な命令を下すことは自己矛盾である。
理性の自己矛盾はすでに『純粋理性批判』において排除されている。

とすると、その実現は、この世を越えて無限の前進においてのみ可能でなければならない。
このことから、必然的に理性は道徳的主体としての人格、すなわち魂の不死を要請する。

 
幸福とは、世界のために自分があるのではなく、自分のために世界があることである。
しかしわれわれは世界の創造者でないので、そんなことは不可能である。
それでも依然として理性はわれわれに最高善の促進を命ずる。

ゆえに、理性が自己矛盾に陥らないためには、最高善は可能でなければならない。
そのことから理性はみずから、世界の創造者にして、同時に徳と幸福の結合の根拠を含む存在者、
すなわち神の存在を要請する。
このように、最高善の概念を介して、道徳は必然的に宗教にいたる。 

 
このような信仰は、今までの信仰とは違う。
カントはこれを「純粋実践理性信仰」と呼んだ。
理性宗教という新しい宗教をみずから提唱し、それを基礎付けたといえる。 

●根源悪 
 
『宗教論』において、カントは人間における悪を起点にすえる。 

人間には「善への素質」が宿っている。
一方で「悪への性癖」が根付いている。
「悪への性癖」とは、道徳法則を感知しながら、なおもそれにそむいて悪しき格律を選択する性癖を意味する。
「悪への性癖」は、諸悪の根源にしてそれ自体悪である。これをカントは「根源悪」と呼んだ。 

 
「悪への性癖」は「英知的所行」とされ、自然的素質ではない。
というのは、「悪への性癖」が悪しき格律を選択する意志に、すなわち自由にもとづいているからである。
それは根絶不可能である。 

だが、「悪への性癖」は克服が可能である。
「唯一不動の決意」による「思考法の革命」により、善への道へ方向転換することによって。 

 
この根源悪はキリスト教の原罪の批判でもある。 

●理性宗教の具体相 
啓示宗教のひとつであるキリスト教の本質のみが、理性宗教の資格を備えているという。
神の子の概念は、われわれの理性の内に求められなければならない。

倫理的共同体は道徳的に最高の立法者でなければならない。
このような存在者として表象されるのが神に他ならない。
宗教は道徳法則を神の命令と見なすことである。
神を立法者とする共同体を教会と呼ぶ。
しかし、この教会は見えざる教会であり、内なる教会である。

カント入門 (ちくま新書)
石川 文康
筑摩書房
1995-05

 

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カントから学ぶことは今でも多いので、 皆さんもカント入門、手に取ってみてください。

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