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社会学について13〜ハーバーマスの社会学

2018/03/01
 
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どうも哲学エヴァンジェリスト高橋 聡です。今日はハーバーマスの社会学について見ていきましょう。

ハーバーマスの社会学

ユルゲン・ハーバーマスはナチス・ドイツの統治下で少年期を過ごし。ヒットラー・ユーゲントとに加わりましたが、16歳の時に敗戦を迎えました。ユダヤ人収容所の実態などを知り、形式的な民主主義の怖さを知るとともに、近代合理性に潜む闇について考えるようになりました。

その後ハーバーマスはフランクフルトのゲーテ大学でアドルノの助手をするようになり、自らもフランクフルト大学で教えるようになり、フランクフルト学派第二世代と呼ばれるようになりました。

フランクフルト学派と批判理論

フランクフルト学派とはドイツのフランクフルトにある「社会研究所」を中心とした研究集団の総称です。第一世代と呼ばれる研究者にはホルクハイマー、アドルノ、マルクーゼ、フロムなどがいます。第二世代にはハーバーマスのほか、シュミット、オッフェ、ヴェルマーらがいます。

フランクフルト学派の研究者はマルクス主義の影響を受けていました。なぜ社会主義革命が成功せずにヨーロッパではファシズムが台頭し、ソビエトでは人間疎外の問題が解決できなかったのかについて関心を持っていました。こうした中、フランクフルト学派の研究者たちはへーゲルの弁証法をもとにマルクス哲学を再構築するとともに、西欧の実証主義にも批判の目を向けるようになりました。

批判理論とはデカルトに見られるような主体と客体を分離した実証主義が認識の目的や意味を無力化して社会的同調を招いたと批判する理論です。 ホルクハイマーが道具的理性と呼んだように、実証主義あるいは理性主義が政治的に利用され、他者支配のための道具に変質したことでアウシュヴィッツにような悲劇が起きたと考えたのです。

コミュニケーション的行為

ハーバーマスは批判理論を継承して、実証主義的な世界観がもたらす問題を深刻に受け止めましたが、第一世代の研究者のようにペシミズムに陥ることなく、コミュニケーション的行為の理論を提出して、独自の視点で近代社会の合理性を定義し直しました。

コミュニケーション的行為とは、言語を媒介として自己と他者の間で「了解」を志向して行われる行為で、真(真理性)、正(正当性)、美(誠実性)の位相に分化するものです。このように行為環境が分化するのは、自然や物質から成る客観的世界と人間が中心の社会的世界と、自己の主観的世界に分かれるからです。つまり、客観的世界では真理性、社会的世界では正当性、主観的世界では誠実性という妥当性が要求されるためです。

しかし我々は現実の世界(生活世界)において、客観的世界、社会的世界、主観的世界を重複的に生きており、三つの世界にかんする妥当性を組み合わせて、言語を媒介としながらコミュニケーションをしています。

たとえば、コミュニケーションにおいて話しては自分の話が客観的な事実だという真理性や社会的な規範に従っているという正当性、嘘をついていないという誠実性などを掲げて話します。聞き手はそうした3つの妥当性に照らして、了解することもできるし、意義を唱えることもできます。このように現実の世界では、常に真理性や正当性、誠実性を組み合わせてコミュニケーションをしているのです。

社会的行為の類型化

ハーバーマスは主に社会的行為について以下のように分類しました。

①目的論的行為

効果的な手段を使って目的を実現したり、望ましい状態へ到達しようとする行為。ウェーバーの目的合理的行為に対応。

②戦略的行為

対人的な目的論的行為ですが、他者の選択を計算に入れながら目的の実現を目指す行為。後述する合理的選択理論が前提とする行為に対応。

③規範に規制される行為

共通の価値に照らして社会集団のメンバーに関わる行為。パーソンズの理論の前提となっているような行為に相当。

④演劇論的行為

互いに観衆となり、観衆の前で自己を表現する相互行為。ゴフマンの提示したドラマツルギー的行為に相当。

⑤コミュニケーション的行為

言葉を用いて相互の確認にもと合意や了解を行う因果関係や権力関係などに拠らない人間的な行為。お互いに自由に考え、反論し、納得しながら作り上げていく合意形成的な行為。

ハーバーマスはこの他にも論争やシンボル行為をあげていますが、議論の中心はコミュニケーション行為とその対極に置かれる目的論的行為や戦略的行為にあります。

生活世界の植民地化

ハーバーマスのいうコミュニーション的行為はウェーバーの目的合理的行為とは異なります。コミュニケーション的行為は相手の了解を得て調整されますが、ウェーバーの目的合理的行為は成果志向的であり、その調整過程が欠如しているのです。したがってウェーバーのいう目的論的行為や戦略的行為は一方通行的な押し付けなのです。

ハーバーマスのコミュニケーション的行為がウェーバーの目的合理的行為と異なるもう一つの点は、ウェーバーの場合、それは一つの行為類型ですが、ハーバーマスの場合は単なる行為類型ではなく、フッサールやシュッツの生活世界という概念と結びつけて提示されているのです。

生活世界とはコミュニケーション的行為の基盤となり、それによって再生産される空間です。そしてコミュニケーション的行為こそが、合理的な了解をつ浮いて秩序を生み出す近代社会の基本的な行為であるということです。つまりハーバーマスにとってコミュニケーション的行為は生活世界を成立させている重要な相互行為です。そのため経済が発達すると、貨幣を介した目的合理的行為が増加し、政治が権力を介して社会システムの制御能力を増大すると、人々が目的合理的行為のみを行うようになります。その結果、日常生活でのコミュニケーション的行為が目的合理的行為によって侵略されるとハーバーマスは考えました。その現象を生活世界の植民地化と呼びます。

まとめ

フランクフルト学派は近代社会のあり方を徹底的に研究しました。その結果理性が道具的理性として使われ、ファシズムなどが生まれ、アウシュヴィッツの悲劇が繰り返されました。

それをさらに突き詰めて考えたのがハーバーマスです。ハーバーマスは社会の三つの位相において、真や正、美が大事にされることを見抜き、これらを大事にする行為をコミュニケーション的行為と呼びました。近代社会の本来的な行為のあり方はコミュニケーション的行為なのですが、資本主義経済の発達やその他の要因によって引き起こされる貨幣を媒介とした目的合理的行為の増大によって、人々は目的合理的行為のみを行うようになり、結果理性の道具的使用が行われる危険性を生み出したのです。生活世界の植民地化とはまさしくそういう事態をさします。

相手の合理的な同意を経ない目的合理的行為の危険さを知ればこそ、相手との合理的な合意形成をしたのちに行為を決定するコミュニケーション的行為の重要性が浮かび上がってきます。

ぼくらもこうしたことを意識してコミュニケーション的行為を行うようにしましょう。

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