人文科学系、主に哲学の専門用語の解説を中心とした雑記集

仏教の無分別智という考え方と森と木のたとえ

 
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仏教の無分別智という考え方と森と木のたとえ
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仏教では、「無分別智」という考え方があります。
これは仏教の基礎中の基礎なのですが、おもしろい考え方なので
紹介したいと思います。
 
 
われわれは通常ものごとを理解しようとするとき、
そのことを分析してどういう状態になっているかを把握します。
そして把握した情報をもとに体系化しようとします。
これを「分別智」といいます。
 
 
仏教では、この考えより一段高いところにある智があります。
それが「無分別智」です。
無分別智とはものごとを分別だけではなく、
直観で把握して判断することを言います。

 
 
ものごとを分別して得た知識は、どうしても部分的真理となってしまいます。
この部分的真理を全体的真理と勘違いして、取り違える人がいます。
そういった部分的真理だけでものごとをみることを否定するのが
無分別智です。
 
 
といっても、大事なのは分別智を駆使してはならないわけではないわけです。
分別智にとらわれすぎて、全体的真理が曇って見えなくなる状態こそ、
「執着」であり「煩悩」だと仏教では考えます。
 
仏教では執着や煩悩こそ避けるべきものだといわれています。
注意すべきなのは、仏教は欲望そのものを否定しているわけではないことです。
そうではなく、執着や煩悩にとらわれすぎて、
自由なものの見方や行動ができない状態(「我執」という)を
さけようとする努力・修行が必要だと仏教の開祖、釈迦牟尼如来(シャカ)は説くのです。
 
 
だから、分別智そのものをすべて否定するわけではないけれども、
無分別智を働かせずにものごとを見ると、
一面の真理しかつかんでいないんだよ、ということです。
 
 
たとえば、木と森のたとえを用いてみると、こういうことです。
まず森があり、そこのそれぞれの木があります。
ある一本の木が切り倒されようとしています。
 
 
単純にこの状況だけ見ると、
木を切り倒すのがよくないと思ってしまう人もいるかもしれません。
でも、その木が病気で他の木に広がるのを防ぐために切り倒しているのならどうでしょう。
 
 
もちろん、その木は切り倒すべきものだとだいたいの人はいうでしょう。
森のことを考えると、木を切り倒すのも仕方ないと考えつくからです。
この場合、もちろん分別智も介在して判断がなされます。
 
 
つまり、木についての知識、木についての病気の知識などは分別智そのものです。
大事なのは、無分別智というのは、分別そのものを否定するわけではなく、
むしろ逆で分別も踏まえた結果、全体を見て判断することを指します。
この森と木のたとえでいうと、森だけを見るわけでも、木だけを見るわけでもありません。
森も木も見て、最後に判断することこそ無分別智です。
 
 
ただ注意しないといけないのが、
科学ではそれぞれの木を生かすために一つの木を切り倒したと考えます。
仏教的には、一つの木それぞれが完全に分かれているわけではなく、
判断をする私も含め、全体は不二のもので、一なるものだと考えるのです。
 
 
「天上天下唯我独尊」という言葉があります。
本来、天の上から天の下にあるすべてのただ一つのものは、
すべて尊いということです。
つまり、本来は存在そのものがすべて尊いということです。
 
 
この尊い本来の私(および私と一体であるはずのすべてのもの)が様々な我執から逃れ、
平静を取り戻すために行うもの。
それが「禅定」です。仏教で行われる瞑想の一種です。
 
 
ぼくは、仏教にしろ、他の宗教にしろ、いろんな宗教を学ぶ際に、
科学的な根拠がない迷信だという立場から見た考えと、
当の信仰を守っている人たちの意見はまったく違うと感じました。
 
 
何らかの感じるものがあってこそ宗教的なものごとは
組み立てられているため、これを即迷信と判断することほど、
危険なことはないし、視野がせまいことはないでしょう。
 
 
また、何か面白い用語があれば紹介したいと思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
 
草の根平和推進者 平高橋聡


 

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