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近代哲学の諸流派 イギリス経験論2 バークリーとヒューム

2021/05/13
 
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どうもこんばんは、たかはしさとしです。久々にマッサージにいったらとても体が軽くなりました。いいもんですね。近くにリサイクル屋さんができてたので行ってみたいなーと思いつつ、遅くなったので今日はいけませんでした。日常って大事ですね、本当に。

高校倫理を学びなおそうシリーズでは前回、イギリスの哲学者ジョン・ロックを紹介しました。ロックは、ベーコンにはじまる経験論の流れの2番目によく出てくる哲学者です。そしてイギリス経験論の3番目に来るのは、バークリーという聖職者です。その前にロックの記事、読んでいてくださいね。



ではバークリーの哲学についてみていきましょう。


バークリーの哲学

アイルランドで生まれたバークリー(1685-1753)はイギリスの聖職者・哲学者です。バークリーの哲学は主観的観念論として知られています。バークリーは唯物論や無神論と闘うため、ロックの経験論的立場を発展させ、観念論を打ち立てました。ロックは人間は生まれつき白紙(タブラ=ラサ)の状態で生得観念などないことを指摘していたものでしたが、バークリーは知覚することを重要視しました。バークリーの有名な言葉「存在するとは知覚されることである」は、事物は心によって経験される知覚の対象となることではじめて存在するという意味です。逆にいえば、心のないところでは何物も知覚されることがないため、存在はないと断定したのでした。

また、心の外に物質世界が存在するという考え方を否定する唯心論の代表的論者としてもバークリーは知られています。このように徹底的に常識を疑い、新しい考え方を打ち立てたバークリーでしたが、聖職者ということもあって、第一原因としての神という存在を否定することはしませんでした。主著は『人知原理論』。


ヒュームの哲学

スコットランド出身のヒューム(1711-1776)は、イギリスの哲学者であり歴史家です。人間不信者ルソーとの交友は有名です。経験論を徹底させることで、ヒュームは懐疑論に行きつきました。懐疑論とは主観的で能力的に限界がある人間に知性では、普遍的な真理や絶対的な真理など知ることはできないという考え方のことです。どうしてヒュームは懐疑論を唱えたのでしょうか。

ヒュームはすべての観念は人間の経験する感覚的な印象に由来すると考え、感覚的な印象を理解すること、つまり知覚すること以外は何も実在しないと説きました。ヒュームによると、客観的な世界は実在しません。心つまり自我を実体と考えたバークリーを否定し、心は知覚の束にすぎないとヒュームは考え、唯心論さえ否定しました。

さらにヒュームによると、因果法則も主観的な確信によってただ結び付いているだけであり、客観性をすべて否定しつくします。当然ヒュームは神を信じない無神論者であり、そんなヒュームの考える実体がすべて否定しつくされる世界では、懐疑論が残るしかなかったわけです。そんなヒュームの主著は『人間本性論』。

ところが近代哲学の完成者となるイマヌエル・カントは主著『純粋理性批判』の発想の二大源泉を挙げています。それがヒュームの因果律の否定とルソーの人間性への尊敬なのです。ヒュームが因果律を否定したことはよっぽどカントに衝撃を与えたらしく、カント自身、ヒュームによって「独断のまどろみ」から覚めたと言っているくらいなんです。全く生産的でないと称されることもあるヒュームの懐疑論的考え方も、カントみたいな哲人の手にかかれば、とても意味のあるものになってしまうのです。

最後に二人のまとめをしましょう。


バークリーとヒュームのまとめ

バークリーは神の存在は否定しませんでしたが、「存在することは知覚されることである」と述べ、ただ一つの実体である自我(心)が知覚するから物事は存在するんだと考えました。ヒュームはさらに徹底していて、心(自我)の存在さえ否定し、すべてを否定しつくす懐疑論の立場に立ちます。

このように書くとイギリスの哲学者ってやばい人たちなのかって思うかもしれません。ところがヒュームは倫理や道徳の存在自体は否定していないのです。むしろ、感覚や感情に基づいた道徳を考えるべきだという倫理説を発表しているくらいです。

ここからは高校倫理の対象外となるので話半分に聞いてほしいのですが、このような感覚を重視する道徳説を唱えた学派が、スコットランド啓蒙主義であり、道徳感覚学派とも呼ばれます。代表的論者はハッチスン、ヒューム、そして古典派経済学の祖アダム・スミスです。

以上、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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