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財務会計の概念フレームワークを読み解く1ー前文

 
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どうも、哲学エバンジェリスト高橋 聡です。今回から企業会計審議委員会が策定した『討議資料 財務会計の概念フレームワーク』(以下、『概念フレームワーク』)について読み解いていこうと思います。

なぜこれを読み解くのか。会計についての知識がない人でも、『概念フレームワーク』を読むことで、会計の基礎的な考え方に触れることができるからです。

会計と会計基準

会計とはなんでしょうか。英語でAccountingと言われる日本語訳が「会計」です。ところでAccountとは口座という意味があります。会社全体のお金の流れを一つの口座に集約してその活動報告を行うのがAccounting、つまり会計と言えるでしょう。

日本において会計帳簿や財務諸表を作る際、最も参照にされるのがたくさんある会計基準です。会計基準とは、会計のルールを決めたものだとざっくりとらえてください。たとえば税効果会計に関する会計基準では、その会計基準が有効になっていこう、税効果会計という処理を行う必要があることが述べられています。

その会計基準を制定する際に参照されるのが『概念フレームワーク』です。この文書は読むのが結構難しく、本当に骨が折れます。でも、会計のエッセンスが要約された素晴らしい文書なので、日本の会計がどのような考え方で成立しているかを知る上でとても大事なものなのです。

この『概念フレームワーク』を読み解いていきましょう。今回は前文からです。

『概念フレームワーク』前文

この『概念フレームワーク』は会計の憲法をイメージするといいでしょう。法律を作る際に基づくものが、憲法です。同じく、会計基準を作る際に基づくものが、『概念フレームワーク』なわけです。

『概念フレームワーク』は前文と本文(全4章)から成ります。今回は、そのうち前文を見ていきましょう。前文は四つから構成されています。概念フレームワークの役割からいきます。

概念フレームワークの役割

概念フレームワークは、企業会計(特に財務会計)の基礎にある前提や概念を体系化したものである。

前文はこう始まります。つまり、概念フレームワークは会計の基礎となる前提・概念を体系化したものです。体系化とは、システム的に説明するといった意味です。言い換えれば、概念フレームワークは会計というシステムの基礎を明文化したものです。

概念フレームワークの二つの目的

さて、その目的には主に二つあります。

①会計基準の根底にある前提や概念などの基礎を提供すること。さらに基礎を提供することによって、”会計基準に対する”理解を深め、会計基準に対する”解釈についての予見可能性”を高めること。

②財務諸表の利用者に役立つ情報を提供し、会計基準の解釈の際にスムーズに解釈ができるようにすること。

ここで追加説明をしましょう。①に出てくる予見可能性とは、あらかじめ見ることができるという意味。この場合は、会計基準に対する解釈を予測して会計基準を適用できることが求められる。

概念フレームワークの役割

概念フレームワークの役割とはなんでしょう。それは、将来の会計基準を開発する際に、指針を与えるという役割です。ただ、現行の会計基準と概念フレームワークの提供する基礎とが異なったり、説明できなかった場合も、すぐに別の新しい会計基準をつくったり、改廃したりすることをすすめるものではありません。概念フレームワークは、基本的な指針を提示するためにあります。

この部分の要約

概念フレームワークは会計の基礎を体系化したもの。概念フレームワークによって提供された基礎は、会計基準の理解しやすさを高め、会計基準の違いをできるだけ少なくする目的でつくられたものである。その役割は将来の会計基準をつくるときに最も重視されるべき資料だということです。

他の3つの前文はあんまり重要性が高くありませんが、見ていきましょう。

会計基準を取り巻く環境

概念フレームワークは財務報告を取り巻く現在の制約要因を反映しています。制約要因とは、具体的にいうと法人税であったり、他の税制であったり、投資家の財務諸表の読み方だったり、会計慣行や商慣行と呼ばれるもんであったりさまざまあります。

ところが近年、このような制約要因は各国間で等質化してきています。ビジネス環境での垣根は低くなりつつあり、その一環として”会計基準の国際的な収斂”がすすめられています。

この国際的な動きに対応するために、企業会計審議委員会は『概念フレームワーク』を発表しました。討議資料として企業会計審議委員会が議論してきた内容、結果を示すものです。国際的な発言の場で日本の意委員会が発言できる機会を多くできることも意図してつくられました。

概念フレームワークと会計基準

会計の基礎の体系化だから、抽象的なものとなる。抽象的ゆえに、概念フレームワークだけでは個別会計基準の代わりにはならない。

概念フレームワークの構成

海外の概念フレームワークを先例として構成されている。

まとめ

今回は『概念フレームワーク』の前文についてみてきました。とくに重要な部分でおさえておいてほしいのは、概念フレームワークは会計の基礎となる前提・概念を体系化したものであるということ、そして会計基準をつくるときにもっとも参照される資料だということです。

つまり、この文書をよめば会計基準制定の際の最も重要な概念や前提について触れられる、とも言えます。だからこそ知らない人こそこの討議資料について知るべきなのです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

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