ツァラトゥストラのギフト−富、愚かさ、創造
どうも、哲学エバンジェリスト高橋 聡です。今回はツァラトゥストラの序説の超人、愛すべき人間、末人以外の重要な概念を三つ考えてみようと思います。
なお、前回記事ではツァラトゥストラの愛すべき人間と末人について考察しました。リンクを貼っておくのでぜひ読んでみてくださいね。
- 富
- 愚かさ
- 創造
富と愚かさ
ツァラトゥストラ=ニーチェは序説の中で、次のように言います。わたしは分配し、贈りたい。人間のなかの賢者たちにふたたびその愚かさを、貧者たちにふたたびおのれの富を悟らせてよろこばせたい。
(ニーチェ『ツァラトゥストラ』(氷上英廣訳・岩波文庫版)p10)
この文章からわかるのは、ツァラトゥストラは自分の何かをシェアして、相手に贈りたいといっていますね。ギフトを贈りたい。
贈りたいギフトの中身はと言うとなんでしょうか。
それはここでは書かれていませんが、ツァラトゥストラの思想のことです。
ツァラトゥストラの思想を贈られることで、人間は気づくのです。賢者は愚かさを悟らされて喜び、貧者はおのれの富を悟らされて喜ぶのです。
賢者は普通賢さが特徴ですよね。ところが、その賢者に賢さの反対の愚かさを自分が持っていることを気付かされて、賢者は喜ぶんです。
同様に、貧者は富を持っていないのが特徴です。でも、その貧者におのれの富があることを気付かさせて、その貧者は喜ぶんです。
下はまあ喜ぶのはわかります。持っていないと思っていたものを持っていたら、うれしいですよね。
でも上の賢者のほうは、愚かさというマイナスイメージのことを気付かされてもうれしくないだろう、とあなたは思われるかもしれません。
しかし違うのです。愚かさを知るというのは、実は知的前進への一歩なんですね。より賢くなれるということです。
ここで、富と愚かさという概念について詳しくみていきましょう。
富
引用文に戻ると、貧者におのれの富を悟らせる、というわけですから、貧者は実はおのれの富を持っているんです。おのれの富を持っているのに、それにただ気づいていないだけなんです。ここから考えるに、富とはなんでしょうか。
富とはずばり、あなたの徳、得意なこと、才能、秀でていることです。
富を悟って喜ぶということは、富とは自分にとって価値のあるものです。だから喜ぶのです。
何も持っていないと思っていた貧者は、自分の徳とか才能、秀でていることがあることを悟って、とてもうれしくなり、超人へ一歩を進むんです。
ではここから得られる教訓はなんでしょうか。
それは、あなたが本来持つ富に気づき、その富をこの世で活かそうということです。
では次に賢者の愚かさについて考えましょう。
愚かさ
賢者も愚かさを悟って喜ぶわけです。愚かさもやはり賢者が自分のなかにあったものです。ここでは愚かさは、単に悪い意味で使われているわけではありません。むしろ、愚かさは気づくととても良い意味なのです。
愚かさとは何かというと、ずばりこういうことです。
愚かさとは、そのことについて私は何も知らないということです。
つまり、ここでは知っていることと知らないことを区別することができるようになるというわけです。
賢者ですから、知っていることは当然知っているでしょう。しかし、知らないことは何も知らない。
このしかし以降のことを強く認識することができるわけです。
知らないことも、さも知っているかのような態度で聞くと、学ぶところは何もありません。
私は何も知らない、愚かだという態度に立つことで、すべてを学びに昇華することができるのです。
これをツァラトゥストラは賢者に愚かさを悟らせるといった内容のことです。
ここから学べる教訓は以下の通り。
「何も知らない」と気づくことで、さらに賢くなれる。
最後に創造について考えましょう。
創造
まずツァラトゥストラ=ニーチェは、創造者は創造するパートナーを必要とすることを述べています。そして創造の中身は、新しい価値をつくりだし、伝えることができるということだと言います。
創造者と創造者のパートナーは、善悪を否定する者、軽蔑する者と呼ばれます。
しかし創造者とそのパートナーは、作物(つまり新しい価値)を刈り入れます。そして新しい価値の豊穣を祝います。
ここから得られる教訓はなんでしょう。
得られる教訓は、あなたは創造者、クリエーターとして、新しい価値を生み出し、その価値を常に伝えよう、ということです。
ところで、ここでこうした重要な概念について学んだ後、何をすべきでしょうか。
まずは『ツァラトゥストラ』を読んでみることをお勧めします。哲学とは結局、自分で考えることに他ならないのですから、自分で翻訳なり原著なりを読んで考えるしかありません。
読書案内
『ツァラトゥストラはこう言った(上下巻)』
ぼくが感じた最も読みやすい『ツァラトゥストラ』の翻訳。ぜひ読んでみましょう。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。