人文科学系、主に哲学の専門用語の解説を中心とした雑記集

生の肯定のためのテストツールを使って、人生を肯定できるか考える

 
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こんばんは、高橋 聡です。今日はニーチェの永劫回帰概念について説明したいと思います。ニーチェの哲学を知らない方は永劫回帰という言葉なんて聞いたことがないと思いますが、大丈夫です。ニーチェが”最悪の思考実験”と呼ぶこの概念、とても興味深いものになっております。それでは見ていきましょう。

永劫回帰とは永遠の円環構造の時間性

永劫回帰については、永遠回帰という呼び方もあります。永劫回帰について、イメージしやすいように次の図をみてほしいと思います。

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至極飾りっ気のない図ですいません。過去から現在、現在から過去へ時間は流れます。これは当たり前ですね。

ところが宇宙の長い年月では、過去から現在、現在から未来という時間の流れは何度も起こるのではないか、とニーチェは考えます。

つまりこの時間の流れが、過去から未来永劫何回でもこの時間の流れを繰り返す、というのが永劫回帰の概略です。

輪廻との違い

インドの有名な時間概念、輪廻と近いのではないかな、と感じた方もいらっしゃるのではないかなと思います。輪廻とは過去世、現在世、未来世があって、それらが永遠に続いていくという考え方です。事実ニーチェの永劫回帰は輪廻の概念から着想を得たと考えられています。

とはいえ、永劫回帰は同じことが延々と繰り返されると考えるのに対して、輪廻では同じ人生を繰り返す、という考え方はありません。永劫回帰は輪廻的ではあるけれども、輪廻をさらに悪いものとした考え方だと言えるでしょう。

永劫回帰は最悪の思考実験

永劫回帰って概念のすごいところは、とにかく時間が無限に繰り返されるという人にとってあまり歓迎できないことを前提にしているからです。だってそうじゃありませんか。楽しいことや嬉しいことも繰り返される、これはまあいいでしょう。ところが人間には、嫌なこと、辛いこと、悲しいことなど、人生の負の側面という出来事も多々あるわけです。それら嫌なことが何回も繰り返されると考えると、ゲンナリしますよね。人によっては、そんな時間感覚など最悪で考えたくない、という人もいるんではないでしょうか。

このように永劫回帰っていう時間の概念は、最悪の思考実験であるといってもいいと思います。ニーチェは実際永劫回帰のことを”聖なる虚言”と言っています。また永劫回帰において世界に意味はなく、ニヒリズムの極致でもあるといわれます。

永劫回帰と生の全肯定

『ツァラトゥストラ』における超人概念

神は死んだ

「神は死んだ!」の言葉で有名なニーチェの著書『ツァラトゥストラ』。ここでいう神の死とは、大きな価値観・思想の拠り所としてキリスト教が科学の発展などに伴って、世界の価値や目的などを語ることができなくなった状況から、世界が無価値・無目的なものとして考えられるニヒリズムの時代が到来したことを象徴した言葉です。またニーチェ自身のキリスト教批判によって、キリスト教が実はルサンチマンの宗教であって、その教義などの根本的な無価値性が証明されたことも、神の死という状況をより進めるものとなります。

超人

『ツァラトゥストラ』ではそんな神の死んだ状況において、提示される理想の人間像が超人です。超人は大地の意義であると語られます。大地の意義とは大地に根差した生命力、生殖、農耕、しっかりとした建築基盤などを連想させます。ここでいう大地の意義とは、人間としての創造的な生命力を指すといっていいでしょう。また超人は自己を超え出る存在であることが何度も語られます。自己を超え出るとはつまり、絶えず自己研鑽し、成長を目指して行動する姿のことです。当然超人は主体的に仲間の超人たちと生きていきます。

超人とは、人間の創造的な生命力を発揮し、成長を常に志向して行動する主体的な人間のことです。

永劫回帰と超人の関係

超人は永劫回帰という最悪のニヒリズムに出会い、どのように考えるでしょうか。永劫回帰というニヒリズムを必死で耐えるのでしょうか。違います。耐えるという点ではニヒリズムを超克したとは言えません。

永劫回帰にただ耐えるのではなく、むしろそれを積極的に受け入れ、「これが人生か、さらばもう一度」という運命愛を抱いて、人生を全肯定する態度こそ、超人にふさわしいとニーチェは考えました。

つまりこういうこと。最悪の思考実験、ニヒリズムの極致の姿である永劫回帰という概念で想定される最悪の世界を楽しむことができれば、あなたはどんな世界でもいきることができるし、少々嫌なことがあるくらいで人生を否定しようとはしないだろう。

永劫回帰のまとめ

最悪のニヒリズム。時間が永遠に繰り返す。そんな時間感覚でさえ肯定できるなら、あなたは他に人生を否定することはないだろう。人生を肯定するためには常に成長を志向し、主体的に生きて生命力が湧き出てとまらないくらいの元気さで生きることです。神の死なんて怖くない、むしろ可能性の塊なんだ。

今の一瞬一瞬をただ全力で生きて、未来を切り開け。

そのようなことをニーチェは言いたかったのではないかな。

あなたはどのようなことを教訓とできるでしょうか。嫌だと思うことを仮定して、徹底的に考え抜くことで、開ける未来があるかもしれない。だから、考えることを常に忘れずに、一生懸命全力で人生を生きよう。

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