人文科学系、主に哲学の専門用語の解説を中心とした雑記集

ニヒリズムの人―キルケゴールとニーチェ 両人のソクラテスから。

 
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 キルケゴールは、ソクラテスを端的にこう表現する、 「無限的かつ絶対的な否定性」と。この言葉はニーチェが唱えた「能動的ニヒリズム」を実践したまさにその人であったことを指している。
 無限否定性の嵐、すなわち何も肯定することをせずに、生きていくということ。このことは、強力な精神の力を必要とする。何も頼りにせず生きる、そういうことだからである。そしてソクラテスは自分が頼りの綱とするものをも否定する。「自分が今こうである」ということまで否定せねばならない。あまりにも過酷すぎる要求。彼に安息の時はない。あまりにも強靭な精神を持つ彼でさえ、その苦しみのゆえに突如立ちどまり、動かなくなるときがあった。彼人間ソクラテスはダイモンの声を聞いていたという。ソクラテスが休んだのはそのときだけであった。
 アテナイの政治、宗教、人々の考え方、すべてを否定しつくしたソクラテス。悲劇は否定された!ニーチェはそう叫んだ。まことにそれは正しかった。彼は旧体制の人であり、決して弟子を豊かにすることはなかったが、そのあと新しい考え方が出来る土壌を作ったのであった。
 その一つが「論理的ソクラテス主義」―すなわち「科学」の思考。次いで弟子と称する男プラトンが生んだ「プラトン主義」。そして無限の否定性から呼び起こされる、個々人の自我の自覚、そして啓蒙。これらが近代ヨーロッパを生む源泉として、ルネサンスを経てヨーロッパに現われ出たのであった。
 キルケゴールは言う。ソクラテスは人間として最大の教師である、と。その意味は計り知れない。だが、次のことが関係しているのではないか。イロニーの愛によって弟子たちを新しい地平に立たせること。論争する相手に遜ってイロニーを通してみせること。

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