カント入門 書評
カント入門
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カントの哲学とは何か。本書の教えるところによれば、一貫した「仮象批判」の態度を貫徹した哲学である。「仮象」とは、客観的視点と主観的視点が入り混じった結果起こる、見かけや先入観のことである。カントはこの仮象と戦い、真理を探った哲学者なのだ。
真理の最高決定機関であるはずの理性が二枚舌で人間を誤らせる。それがカントの発見した4つのアンチノミーである。その中で特に重要なものが、第三アンチノミーである。
第三アンチノミー
テーゼ:自然法則による因果性だけでなく、自由による因果性もある。
アンチテーゼ:自由は存在せず、すべてが自然法則によって起こる。
両命題は、互いに排斥しあっているように見える。だが、カントによるとどちらも真なのである。テーゼは英知界における存在者として可能であり、アンチテーゼは自然界における因果として起こっている。つまり、それぞれの妥当範囲が異なるという。これらは小反対対立なので、仮象矛盾である。そして、ここで確立された「自由」は実践理性へと向かう。そこらへんの詳しい話は本書を読んで欲しい。
本書で印象的だったのは、カントのルソー告白の場面である。いかにカントがルソーから影響を受け、ただの学者から哲学者へと成長したか、わかりやすい説明がなされている。その「回心」の意味は、本書の色々な場所で確認することができる。
カントの重要な概念、例えば「理性」「アンチノミー」「コペルニクス的転回」「物自体」「ア・プリオリ」「自由」「道徳」「判断力」「宗教」といったものがよくわかるように構成されている。カントの用語は少しとっつきにくい部分があるが、そこを乗りこえれば、本書は良書である。