人文科学系、主に哲学の専門用語の解説を中心とした雑記集

少年犯罪における脱集団化と若者の自己肯定感の低下

 
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哲学エヴァンジェリスト。 東洋哲学や西洋哲学問わず、面白い哲学をあなたにお伝えします。
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どうも、哲学エバンジェリスト高橋 聡です。前回の記事では学校と職業選択における生きづらさの問題について考えました。あなたがまだ記事を読んでいないなら、次にリンクを貼りますので、ぜひ読んでみてください。

さて今日は少年犯罪とそこからわかる若者の自己肯定感の低さについて考えていきたいと思います。今回も『Do !ソシオロジー』の議論を大いに参考しています。

今日学べる内容は以下の通りです。
  1. 非行集団がほとんど存在しない現在では、少年犯罪はその場のノリで行われる
  2. その場のノリに合わせて行動するということは、一般の若者も大事にすることである
  3. 純粋な自分の感覚を大事にする現在の若者は、他者の否定されることがそのまま自己肯定感の否定につながる
ではさっそく中に入っていきましょう。

少年犯罪における脱集団化

犯罪を犯す少年は、実は脱集団化しているのだ、と言われるとあなたは違和感を感じるかもしれません。ニュースなどで少年犯罪が凶悪化しているなどと聞いたこともあるでしょうから、この脱集団化する少年犯罪者というのは、一見反するように見えます。一体この脱集団化とはどういうことか、ここではみていきましょう。

かつては非行集団が存在していました。非行集団は犯罪を犯すことを許容するグループのことで、この非行集団に属する少年たちにとって、仲間との関係は第一義として重要なものでした。

しかし現在では、強固な非行集団はほとんど存在しません。外見的には集団的な犯行だとしても、現在の場合ではその集団の質が変容しているのです。

集団による犯罪を犯す少年は、現在では偶然居合わせたり、仲間と一時的な盛り上がったノリに逆らうことができないまま、その場限りの凶悪犯罪を犯す、というケースが非常に増えているのです。

強固な非行集団が存在していた時代とは違い、集団による犯罪は増えているように見えても、そこには強い仲間同士の結びつきがありません。集団へのコミットメントが全く存在しないのです。

なぜノリに逆らえずに犯罪を犯してしまうのか。理由をひとつ指摘しておくと、非行少年は人間関係に安心感を持たず、自己肯定感が低いということが挙げられます。つまり、ノリに合わせて行動せずに裏切ってしまってその仲間から否定されると、自分の自己肯定感を余計に傷つけてしまう。だからその場のノリに逆らわず、行動しようとするわけです。

実はこの少年犯罪における脱集団化でみられる、以前に比べての少年たちの自己肯定感の低下という状況は、非行を起こすことのない若者の間でもほとんど同じことが言えるのです。

次に自己肯定感の低下について、みていきましょう。

自己肯定感の低下

自己肯定感が低下したのは、若者たちのコミュニケーション能力が低下したからではありません。人間関係に対する若者たちの期待値が過度に上昇したのがその原因です。

優しい関係というべき、相手の否定もしないし、自分の否定もされないように関係を取結び、行動するということが現在の若者たちの間の状況として見られます。ところで現在の若者たちにとって、純粋な自分の感覚に自分なりの強いこだわりを持っている人は多いでしょう。この純粋な自分の感覚とは、分節化される以前の感情を大事にするということにつながります。社会的な状況などの前に、まず自分の感覚を大事にするわけです。

アメリカの社会学者R.ベラーの表現を借りると、行為の価値基準として「『善くある』は『いい感じ』となった」わけです。

他者が自己に与える否定的な評価はすぐに自己肯定感を傷つけるのです。だから違いが傷つかないように、優しい関係を結ぶわけです。

そういう状況下では、ノリ(あるいはより現在的な表現をするとその場の「空気」)から逸れた行動をすると、否定的な評価が与えられるのではないかと心配になるのです。

空気を読むことが大事とされ、空気(ノリ)に反した行動をする人には否定的な評価がなされます。だからそうならないように、ノリの悪い行動を避けるわけです。

こういうわけで、少年犯罪における脱集団化と自己肯定感の低下という状況は結びついていることがわかります。

読書案内

自己肯定感を取り上げる日本の書物は意外と少ないです。特に学術的なアプローチをとったものは皆無に近いです。

一般書ですが、自己肯定感を取り上げた本を一冊紹介しましょう。


『自己肯定感の教科書』

自己肯定感とは何かを考察した本というより、自己肯定感をあげるにはどうすればいいかが書かれています。

今回の記事はここまでです。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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