人文科学系、主に哲学の専門用語の解説を中心とした雑記集

活字、書籍とインターネットについての考察

 
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本に印刷された活字と、インターネットで見る文字との相互の利点と欠点についての考察。
 若者の活字離れが嘆かれて、幾年経つだろうか。活字離れとは何か、そこにインターネットはどう関わってくるのか、少し考察してみたい。
 そもそも、私も数年前まではほとんど活字の本といったものに触れることはなかった。せいぜい、三国志を読んだり、戦争シミュレーションゲームの攻略本を読むくらいで、文庫や新書など、手に取っても読む気にもなれなかった。インターネットで情報を得ることで、大体のことは事足りるし、必要な時だけ本を手に取ればいいから、普段から本なんて読む必要なんてないだろ。そういった思考をしていた。
 しかし、此処1年ほどで文庫を中心に様々な書に触れるようになって、其の考えの愚かさを知った。インターネットで手に入れられる情報は、酷く断片的でまた恣意的な曲解が非常に多いと思われるのである。
 確かに、インターネットでもニュースサイトやウィキペディア・辞書等、便利なページはたくさんある。私も現在でも、まるまるサイトから引用することはないにせよ、よく参照させてもらう。サイトでは、[特に公共的サイト(ニュースサイトやwikipedia)では、]扱われる物事をわかりやすく解説しているか、[特に個人的サイト(個人のホームページやブログ等)では]自分の考えを含めて扱われている事物を解説しようとする。利用価値がまったくないとはいえない。むしろ、ネット不要論者が言うようにくず情報ばかり集まっているわけではなく、かなりまっとうな意見を述べているサイトや参考になるサイトも多々あるように思われる。が、大半の個人的サイトでは其の考えについての根拠[出典・誰々の考え]などが示されていることはあまりなく、あったとしても局所的に取り出して拡大解釈や縮小解釈をしているような明らかな論理の飛躍があるものが多いのもまた確かであろう。自分がそこで扱われる情報についてある程度精通しているならまだしも、ほとんど聞いたこともない事柄なら、そこで書かれる情報を鵜呑みにしてしまう危険性が高い。
 対して書籍は、著者の意見が偏っていない場合は、大抵上記に上げたネットの危険性に陥ることは少ない。もちろん、書籍では全く誤謬がないというわけではない。どんな人間でも、間違いを探せばどこかにあることは当然であるが、本を出版できる程の著者は、すべてが信じられるわけではないにしろ、出版社の編集等を通すことを加え、考証を踏んでいる場合が多いのも事実である。ネットではこのような考証を踏むことはせずとも文字情報を発信できる。その気軽さは利点とはなりえるが、情報の信頼度という点においてはむしろ欠点といえよう。
 あんまり文章でだらだら書いても読む気が失せるので、少しまとめてみよう。上に書いたことばかりではなく、小さな利点等も付加した。
書籍の利点
主題に対する考証を踏まえ、其の典拠も示されている。それ故、論理が錯綜することも少なく、その書を考える際にどのような書を読めば良いかが明確にわかることが多い。最後まで読みきることで著書の姿勢ということも理解できる。
紙媒体に印字されているので、傍線や余白に自分なりの注釈・気になったメモをそこにすぐに書き込める。
書籍の欠点
どのような考証を経ていようと、其の典拠が確かなものでないと信用できない。其の点はネットと同じであり、また曲解等も十分にあり得る。信用できるかできないかの最終的判断は結局自分が下すしかないが、どのような欠点があろうともまとまっていることも確か。
紙媒体ゆえ、持ち運びが不便、かつ劣化する。
ネットの利点
情報の検索性が圧倒的に早い。書き手も読み手も手軽。コメント機能などで情報の双発信が出来る。
一度書き込んでしまえば、その情報はかなり先まで残る。データの持ち運びが便利。
ネットの欠点
考証が踏まれていることが少ない。典拠も示されることが少なく、見るべき点を見ていないものが多い。断片的、まとまりに欠ける。
改竄のおそれ、他人に引用されてもわからないこと。
 ここでは上記のように利点と欠点を少し捉えてみたが、結局のところ、書籍でもネットでも信頼できる情報かできない情報かは、自分が判断するしかない。青空文庫などはやはり価値が高く、それを印字することである程度本に近づけることは出来るし、ウィキペディアでも記事によっては信頼できる書籍等から記事をまとめていることも多い。また、海外の哲学辞典や学問辞典は活字版となんら差異ないことも多々在り、そういった情報も有用である。ただ、何事にしてもすべてが信頼できる情報であると捉えたり、すべてが取るに足らないことしか書いていない、と判断してはならない。何事も工夫次第で、情報を有用に利用できるかできないかは決まってくるのである。ただ、書籍では多少なりとも信頼が置きやすいということ、ネットでは双方向コミュニケーションが取りうるというそれぞれの利点があることは間違いなく、そういったことから自分にとってどちらも使いこなせるようにするのが最も賢い立場であることは間違いないだろう。
 活字離れの欠点は、まさにその書籍の有用性を捉え切れていない点にあるといわざるを得ない。ただ、ここでは其の解決策を述べたわけではないので、其のことについてはおいおい別の要素を加え、考えたい。

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