デュルケーム『社会分業論』 第一版序文
本書の目的―「道徳の科学」(=社会学)を樹立させること。
「道徳は経験的世界の諸理由によって形成され、変形し、維持されるのであって、これらの理由をこそ、道徳の科学が決定しようと試みるのである。」
科学は「行為の志向すべき方向を発見せしめ、われわれが漠然とめざしている理想を確定しうるものであることが、」本書によってみられる。
道徳的実在とは、即ち社会のことである。そして、この道徳的実在を研究する学問(道徳の科学)こそ「社会学」である。道徳は、実現済みの諸事実の一体系かつ世界の全体系に結びついたものを言う。
ある人々は、科学と道徳との間に対立を設定してきた。しかし、それは誤りであり、科学が樹立した法則はただちに道徳的準則として用いることができる(その場合、科学は技術となる)。
本書において「さまざまな法規定の体系をとおしてわれわれがいかに社会的連帯を研究してきたか、また、諸原因の探究において、われわれが悟性の対象たりうる、したがってまた科学の対象たりうるだけの深い社会構造の諸事実に到達しようとして、いかに個人的判断や主観的評価にかかわりすぎるものをいっさい放棄してきたが、理解されるであろう」とデュルケームは言う。「われわれは、真の経験を創設すること、すなわち方法的な比較を確立すること、に専心してきた」のである。
個人が自立的になればなるほど、社会に依存するようになるという表面上の二律背反を解決するキーワードになると思えたのが、社会的分業であって、それゆえに本書では社会的分業を取り扱っている。