精読『近代文化における貨幣』19~21 貨幣と分業 啓蒙主義
19・20 現物経済時代には、分業はわずかな萌芽を見せたにすぎなかった。
貨幣経済によって、分業は促され、その結果《近代生活の錯綜した共生関係》が生まれた。前回も言われていたように、ここでは貨幣によって同じ経済圏に属する成員の紐帯が生まれることを指摘している。《なぜなら、いまやすべての人が他の人のために働き、すべての人々の労働によってはじめて包括的な経済上の一体性が作り上げられ、それがまた個人の業績の一面性を補完するようになるからだ》。
21 貨幣は、《全人類をも包括する共通の関心を作り上げた》。貨幣によって《直接的な相互理解の土壌が作られ行動基準の均一化が生じた》。そして、啓蒙主義が生まれた。
ここでは分業について触れられています。フランス社会学の祖、エミール・デュルケムにとって分業は社会発展を説明する上での鍵概念でした。ジンメルが分業にそこまで意味を持たせているかは不明ですが、貨幣経済への移行により分業が進展し、その結果紐帯が生まれるという流れはおよおそデュルケムのいうところと矛盾はないように思えます。ここでジンメルは註において《分業形成は貨幣経済の拡大と二人三脚で進まざるを得ない》といいます。個別的なもの同士の間に画一性をもたせ、共通の価値尺度がない限り、分業は進展しないのです。
貨幣が全人類に共通の関心をつくり、相互理解の土壌が生まれたという指摘は面白いですね。こういう発想が突然出てくるのがジンメルの特徴です。少し戸惑いもしますが、たしかにフランス啓蒙主義にしろ、ドイツ観念論にしろ当地における貨幣経済の発達と期を一にして発生したのは間違いありません。
ここまでは主に貨幣のプラス面を取り上げてきました。次回以降は、負の局面についても触れることができるでしょう。
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Comment
読みましたー!続きを楽しみにしています(^ω^*)
>よさん
ありがとうございます。
書かないといけないと、と思いつつついさぼってしまいました。