スピノザ 第四章付録1
「10 人間が妬みやなんらかの憎しみの感情にかられているとき、そのときにかぎり彼らは、たがいに対立的である。また人間は、自然の中で他の個体よりもはるかに有能であるだけに、人間によって脅威となるのも当然である。
11 ところが、人の心を征服するものは、けっして武力でなく、愛と寛容である。」
(工藤喜作、斎藤博訳『エティカ』)
スピノザの場合、対立は憎しみの感情にかられているときに起こると言う。ただし愛と寛容から許される対立もあると思う。スピノザはそれも考慮に入れているはずだ。
人の心を征服するものは、愛と寛容―決して武力ではなく。誰もが考えたことのあることだが、ここまできっぱりといわれると嬉しいものである。
ところがどうであろう。世界中を見渡すと、武力による心の征服を図ろうとすることの多いこと。DV・虐待から始まり、そして紛争・戦争。いまだに絶えることのないこれら武力の制圧は、憎しみによる新たな対立を生むことは請負である。
憎しみをなくすこと。あるいは憎しみが生じても、それを人のせいにしないこと。いかに難しいとはいえ、考えねばならない問題である。