石川文康『カント入門』 第一章メモ
カントの哲学―理性批判 あるいは 批判哲学
ここでいう批判とは、法廷で真偽を追求するために行われるものを想像したほうがいい。
何の批判か?
最高決定機関である理性の欺瞞性、および理性が作り出す仮象についての批判(一貫した仮象批判)。
カント哲学の出発点は?
アンチノミー論。4つのアンチノミー。
例えばX先生がA君に対して「B君は信頼できないやつだから用心しろ」といい、B君に対して「A君は信頼できないやつだから用心しろ」と言ったとする。X先生は二枚舌を使っていたのである。その両方が明るみに出たとき、A君とB君はけんかをするであろうが、やがて2人はX先生が言ったことがおかしいことに気付き、X先生のアイデンティティー自体を疑うであろう。このX先生を理性に変えると、アンチノミーの問題点が見えてくる。いわば理性の二枚舌をカントは批判しようというのだ。
第一アンチノミーは時間と空間に関するテーゼとアンチテーゼから来るものである。テーゼはアンチテーゼを、アンチテーゼはテーゼを偽とみなすため、世界それ自体は存在しないことになってしまう。
カントはヒュームを「仮象批判の先駆者」と見なした。ヒュームの因果律批判こそが、カントの独断のまどろみを目覚めさせ、理性批判への道を用意した。