人文科学系、主に哲学の専門用語の解説を中心とした雑記集

精読『近代文化における貨幣』13~18 貨幣の性質・組織間連合

 
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13 貨幣特有の性質―非人格性と無色透明性。この二つの性質は文化の進展とともに強化される。《貨幣は、利害の結合と分離のあいだにじつに精妙な境界線を引くことを可能にした》。
14・15 組織間連合の二つの例―目的を共有する諸団体が共同の出資金を出し合うことで、合併を意識せずに目的を達成させることができた。これは出資金という貨幣を用いた方法によって成功を収めたのであって、中世にはなかった。
16 個別的なものを保留したまま組織間連合が統一を実現できることを貨幣は示した。
17 貨幣はその性質ゆえに、《同一経済圏に属する成員のあいだにきわめて強力な結びつきをも作り出す》ことになる。
18 近代人の存在は貨幣経済が必然的に生み出す利害関係によって作り上げられた結びつきのうえに成立している。それゆえその結びつきなしに生活は成り立たない。
 貨幣という無色透明で非人格的な性質を持った媒介物を持つことによって、組織はより普遍的な目的を持つようになり、そして成功を収めました。ひとつがフランスの同一業種の労働者団体間の連合で、もうひとつは困窮した教区の援助のための組織連合、グスタフ・アドルフ協会です。この二つの連合の成功の例からわかるように、同じ経済圏に属する人々の間に強い結びつきができているのです。
 『社会分化論』の第五章「社会圏の交錯」も参照してみてください。《個人の特殊性をこえた抽象度の高さのゆえに興味深い統一的な社会的意識への統合は、賃金労働者たちが賃金労働者として共属する場合にみられる。…労働者は一般に賃金のために働いているという形式上の事実によって、同じ境遇にあるものどうしで結合する》とジンメルは言います。ジンメルは『分化論』の時点では貨幣が直接このような作用を持つとは述べていませんが、薄々気づいてたのでしょう。
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