人文科学系、主に哲学の専門用語の解説を中心とした雑記集

精読『近代文化における貨幣』5~12 人格と所有、人格と集団と貨幣

 
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5 人格と所有の関係(9節まで)。
古代―土地所有が人格に帰属
中世―人格的権利が土地所有に依存
古代と中世、どちらにおいても、《人格と所有のあいだには、なお緊密な地縁上の結びつきが保たれていた》。
6~7 中世においては土地所有が共同体構成員のための資格となっている。ただし例外もある。
8~9 貨幣経済が、《人格と物権の共属性》を解体し、人格的要素と地縁的要素が高度に分化させられる。貨幣は、あらゆる経済活動の非人格性を生み出し、人格の自立性と独立性を強化させる。
10 個々の人格と集団の関係。人格と所有の関係と同じような発展を辿る。
中世―同業組合は、さまざまな分野において生活と分離できないまさしく生活共同体だった。人格と集団は結びついていた。
11~12 貨幣経済は、《メンバーから会費を要求するだけの、あるいは金銭的利益のためだけの無数の団体の設立を可能にした》。団体は人格的要素から脱皮するのに対して、主体(人格)は、中世のような《自らを拘束していた束縛》から解き放たれることになる。貨幣は《客観的全体と化した団体と、主観的全体と化した人格のあいだに割りこみ、両者に対立項として新たな自立性と自己形成能力を与えた》のである。
 ここでは、人格と所有、人格と集団の関係に貨幣経済がどのように影響を与えたか、について考察されています。現物経済時代には所有にしろ、集団にしろ、人格と一体のものであったのが、貨幣によって人格から分離させられ、所有と集団は非人格的で客観的なものとなったのです。分離された人格のほうは主体として確立され、自立性・独立性・自己形成能力を獲得しました。このように貨幣を媒介として、高度な分化が促されるのです。
 貨幣経済が無数の団体の設立を可能にしたことは、重要です。なぜなら、ジンメルにとってさまざな集団の成員になれることは、近代の自由な主体の形成にとって鍵となる概念だからです。そのことは前回取り上げました。
 貨幣が分化を促す、さらには非人格的な客観と自由な主観の発展に寄与するということを頭の片隅に入れておいて、次に進みましょう。
前:精読『近代文化における貨幣』1~4 主客の分化と貨幣
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