人文科学系、主に哲学の専門用語の解説を中心とした雑記集

精読『近代文化における貨幣』1~4 主客の分化と貨幣

 
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1 近代と中世の対立点を社会学的立場から要約。
2 中世の人間は、主客が一体であり、人格が利害関係に溶け込み、利害関係が人格によって決定されるようになっていた。
3 近代では《両者の一体性》が解体する。
 人格に自立と内的・外的活動の自由を付与し、主体が確立した。対して、生活内容(≒前節の利害関係)に客観性が与えられた。
4 近代において、主観と客観は対立しつつ発展し、それぞれが分化していった。《この分化の過程の主客両側面が貨幣経済によってどのような影響を受けたか。これを以下に述べてみたい》。
 4節に「分化」というキーワードが出てきます。ジンメルの処女作『社会分化論』との関連を指摘しておきたいと思います。全訳が青木書店の現代社会学体系、抄訳が世界の名著デュルケーム・ジンメルに入っています。
 その第三章では、集団の拡大と個性の発達が述べられます。ジンメルによると、各集団があり、各集団に属する個々人間の能力や役割の分化が進むにつれて、それらの集団はその性格や機能において互いに類似してきます。さらに、成員間の分化が進み、他の諸集団との類似や接近が進むにつれて各集団は拡大し、それぞれのあいだの境界線が次第に取り除かれるようになってきます。第五章では、人々は分化が進むにつれて、血縁地縁のつながりよりも、個人としての特質・傾向・関心・生活様式などの類似によって人々は結びつくことになると言っています。前近代社会においては、人々は1,2の集団に属してしかいませんでしたが、分化の発達とともに数知れぬ集団に属することになります。目的も機能も異なる多種多様の集団に属するわけですから、各個人は前近代的な閉鎖的集団の制約から解放され、自由な人格が形成されるのです。分化が進めば進むほど、この自由な人格としての各個人の個別化の度合いは進むといいます。
 このように、分化はジンメルにとって、社会発展を理解するにあたり重要なキーワードなのでした。その分化に即して貨幣を考察するということを、頭に置きつつ先へ進めることにしましょう。
参考文献:『世界の名著47 デュルケーム・ジンメル』(中央公論社)
次:精読『近代文化における貨幣』5~12 人格と所有、人格と集団と貨幣
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Comment

  1. 退会したユーザー より:

    私も今週中に読みます~

  2. たかはしさとし より:

    >よさん
     そうでしたか^^何か気づいたことがあったらコメントください。お願いします。

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