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2022.1.11 小金丸泰仙『慈雲尊者の仏法』 マクロダイジェスト 


書籍名

最近、小金丸泰仙著『慈雲尊者の仏法』という書籍を読みました。慈雲尊者とは、大阪の中之島の商人の家に生まれ、若い内に出家し、関西地方を転々としたのちに、河内、現在の河南町の高貴寺に隠遁して生涯を終えた仏教者です。日本に固有の宗派的教えに偏らず、釈尊に帰った独自の仏教思想を説いたことが特徴です。

本書のテーマ

この本で一番大事なテーマはなんでしょうか。ぼくが今本を読んでいて感じたのは、”この世をまとめに生きるために慈雲尊者は仏法をどのように考え、活かしたのか”と言う点です。言い換えれば、仏教にはいろいろな教えがあります。でも釈尊が本当に言いたいことはなんだったのか。これを徹底的に突き詰めて、生きるとは何かを考え抜いた人が慈雲尊者だった、ということです。
ではこのテーマに対する答えは本書ではどう説かれているでしょうか。簡単にまとめると、”人生の迷いを脱し、苦を楽しみへと変化させ、世界のすべてが真実を現していることに気づく”ことで、この世をまともに生きることができると慈雲尊者は説いたのです。

大事な点

これを考える上で大事なことがあります。一つはいのちを尊重すべき理由です。この世をまともに生き、迷いを脱するには、自分が今生きていて、活動するということと、これまでのいのち(仏教でいう衆生)が連続してあることを徹底的に自覚する必要があります。これを仏教で説明する原理は縁起という考え方です。縁起とは、一言でいうと二つ以上の世界の存在があったとしたら、それぞれが相互に作用を与え合って存在しているという関係性を規定する仏教用語です。あらゆるいのちや存在、そして自己までも含めて縁起でつながっている、これを徹底的に自覚することが大事なんです。いのちの大事さを説いた戒律が、不殺生戒です。このいのちのつながりと大事さを自覚するとき、感謝の気持ちと存在自体が奇跡であるという気持ちが心に湧き上がってきて、これを糸口に迷いから真実の世界へと近づくこともできます。

二つ目に大事なこと、それは自然の理がどこにあるかを理解し、善悪の判断基準が見えてくるということです。自然の理が実は仏性とか法性と言われているもので、ある存在が”あるべきように”存在するというこの世の掟のようなものです。世界の側で自然の理を把握することが善悪の判断基準となります。これを自己の側で把握すれば、自己の分限、つまり自分が今なすべきことを把握することにつながります。自己の分限をまっとうにこなし続けて、今を生き抜く覚悟。これが悟りにつながることが本書では説かれています。

三つ目に大事なことは、物事に集中して三昧の状態に入ることです。二番目ともつながります。自己の分限に本気で取り組めば、自然と集中していることすら忘れる三昧の境地を楽しむことができます。これは心理学の用語でいうフローとかゾーンという状態です。この三昧の境地では、時間感覚がゆがみ、没頭した状態に入っているのです。

慈雲尊者は、真の悟りとは自性解脱だと指摘します。自性解脱とは、すべての事象が仏の教えに符合することにだんだんと自分が気づいていく悟りだといっていいでしょう。そうすることで、他の宗教なども含めた多様な価値観を受容することができるようになります。

ぼくは本書を読んだことで、仏法とはまさしく生きるための実践哲学という側面が強いことを再確認することができました。本書では最後に十牛図の解説があり、その解説が秀逸でとてもわかりやすかったです。

本書を読んだ後の実践

本書の内容をこれから生きるためにぼくはどう活かすのか。これを自問したとき、何よりもまず空観、無常観を常にもちつづけてつつ、いのちの大事さを忘れずに頭にとどめ、感謝の気持ちを持ち生きていくことです。そうすることで人にも生き物にも優しく接することができるようにしていきます。

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