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フロム『自由からの逃走』を読むための用語解説/ マックス・ヴェーバー(1864-1920)←マックス・ウェーバー p60 |『自由からの逃走』10


 

ヴェーバーはドイツ語読み、ウェーバーは英語読みで同一人物です。ヴェーバーは社会学黎明期におけるドイツの社会学者、思想家です。社会科学の各領域にマルクスと対照されるほど巨大な業績を遺しました。はじめは国民経済学をおさめて若くしてフライブルク大学、ハイデルベルク大学の教授になりましたが、重い神経症(うつ病)のために休職し、結果的に退職します。最晩年にウィーン大学で教壇に立つまで在野研究者として社会学学界に多大な影響を与え続けました。彼の研究は国民国家としてのドイツの運命、西洋的理性の行く先、西洋的学問の運命などへの深い省察と実存的関心に貫かれていました。

うつ病を経験して在野に下った学者としてヴェーバーは、ドイツ社会学の金字塔『社会科学的認識における客観性』論文などを相次いで発表します。客観性論文におけるキーワードとなる認識理想としての「価値自由」と方法概念としての「理念型」がありました。

価値自由とは、価値評価・価値判断に距離を置く自由な態度を指します。ヴェーバーの真意をここに記しますと、社会科学の認識において、客観性とは認識する主体(研究者)が自らの前提にある価値理念や価値判断に対して自覚的にふるまって、これを自己統制する主体的な態度に裏打ちされなければならない、という考え方です。つまり社会科学の研究者(広義には我々のような学者以外の学ぶ人たちも含みます)がもつ社会的・文化的な価値観などから逃れることはできないんだけど、これをまず自覚しなさいということです。そのうえで、決して研究を発表する相手や学生などに対してこの価値観を押し付けてはならない、ということを含みます。これが価値自由です。

理念型(りねんけい)とは、人間や社会、文化の科学において概念の基本的な特性を浮き彫りにするためにヴェーバーが創出した用語です。無限に多様な経験的な事実の中から一定部分を実際最も重要な要素に焦点を当てて、矛盾が含まれないように理論的に構成したものが科学的概念である、とヴェーバーは考えます。このようにして得られた概念は現実には実在しないユートピア的性質を帯びるので、ヴェーバーはこれを理念型と呼びます。注意しておきたいのは平均型や類概念、自然法則、当為概念のどれにもあてはまらないことです。複数の現実の経験的事象を比較対照し、測定しようとするときの補助的概念が理念型なのです。この理念型は社会学的な仮説構成として発見的価値をもちます。具体的にはヴェーバーの研究では近代資本主義の発生的理解などが挙げられます。

こうした方法の理論化はただ単に社会科学における認識の意義と限界を明らかにしただけではなく、合理化の下での歴史哲学的な問題点、ニーチェも指摘するニヒリズム(意味の喪失)への省察が含まれていて、そこにヴェーバーの凄さがある、と指摘する研究者もいます。

なぜ西欧のみが普遍的合理化が進展して発展したのか、という問題意識のもとに書かれた『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』や『世界宗教の経済倫理』における宗教社会学的業績や、『職業としての学問』『職業としての政治』『支配の諸類型』といった政治や学問に関する業績は、一種の文明論的体系をなしており、ヴェーバーの仕事はドイツの実存哲学者ヤスパースの実存の生きたモデルとなり、さらにはハンガリーの哲学者ルカーチの物象化論や、フランクフルト学派のアドルノの『啓蒙の弁証法』にも大きな影響を遺しています。

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