人文科学系、主に哲学の専門用語の解説を中心とした雑記集

大地の意義を知り、大いなる軽蔑を行う超人−ツァラトゥストラの序説より

2019/07/28
 
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どうも、哲学エバンジェリスト高橋 聡です。

今回の記事は、ニーチェの超人概念についての解説です。ニーチェの哲学の中でも、「超人」という概念は有名です。ですが、その超人が持つ大地の意義や大いなる軽蔑などについて、あなたは聞いたことがありますか。今回は大地の意義や大いなる軽蔑についても解説していますので、最後まで読みましょうね。

超人とは

超人とは、人間を乗り越えた存在のことです。ニーチェは『ツァラトゥストラ』という著作の中で次のように言っています(大いに意訳)。

人間にとって猿は笑うべき存在だろ。超人にとって人間は猿のように笑うべき存在なんだ。

超人と人間は明らかに違うということがわかりますね。この超人を目指すために、『ツァラトゥストラ』の前半は説かれるわけですが、「ツァラトゥストラの序説」で述べられている超人像をまず見ていきましょう。

「ツァラトゥストラの序説」では、超人について次のように言っています(大いに意訳)。

超人っていうのは、大地の意義なんだ。そしてさらにいえば、超人とは大いなる軽蔑である。

大地の意義

ではまず、大地の意義ってなんでしょうか。あまり聞かないことばですね。

ぼくなりに要約していうと、次の通りです。
  • 大地の意義とは、この地球という大地に根ざし、地上という現実を直視して生きることである
  • 言い換えれば、大地の意義とは、神やあの世といった地上を超えた希望を語らずに今この場を生き抜くこと
超人は大地の意義である。つまり、超人は大地に根ざして生きる存在だ。だから、神とか超越的な概念にわずらわされることなく、ただ地上で力強く生きる存在なんです。

この「大地の意義」という概念から得られる教訓はなんでしょう。

それは、現実を直視し、大地に根ざした思考と活動をして、今この場を生き抜こうということです。

大いなる軽蔑

では次に、大いなる軽蔑とは一体なんでしょうか。この言葉もあまり聞かないですし、普通、軽蔑ということばは、いい意味には使わないですよね。

ニーチェはこう言っています。(大いに要約)

大いなる軽蔑っていうのは、自分の幸福に対して嫌になって、自分の理性や徳に吐き気がする状態だよ

これだけ見ると、まだいい言葉のように使ってはいませんよね。でもその意図を汲み取ると、教訓が得られるくらいポジティブなことばなんですね。

ぼくなりにいうと、次の通りの意味になります。

  • 大いなる軽蔑とは、幸福・理性・徳・正義・同情といった、自分が持つ固定観念を軽蔑して、疑い抜けということである
  • 換言すれば、大いなる軽蔑とは、この世の当たり前に与えられている言葉の意味を考え抜いて、自分なりのほんとうの意味を見出すことである
超人は大いなる軽蔑である。つまり幸福とか理性とか徳とか、一見世間で良いとされている行為もまた、社会的に生き残ってきた固定観念にすぎないのだ。だからこそ、無批判にあたりまえを受け入れるんではなくて、疑いの目で物事を見ることも大事ですよ、ということ。

この「大いなる軽蔑」から得られる教訓は、以下の通り。

ここで得られる教訓は、あなたは今まで当たり前だと思っていた固定観念を一度軽蔑してみよう。そしてこの固定観念を疑い、考え抜いた末、あなたなりの意味を見出さそうということ

まとめ

超人とは、人間を乗り越えた存在であり、人間の進化系です。

その超人は大地の意義である、とニーチェは言います。この大地の意義とは、現実を直視し、大地に根ざした活動をしようということ。

さらに超人は、大いなる軽蔑です。大いなる軽蔑とは、既存の固定概念を疑い抜き、自分なりの本当の意味を見つけて概念を再構築すること。

この二つがまず超人には大事になってくるのです。

次回は、愛すべき人間というテーマで没落と徳について語りたいと思います。

では、読書案内コーナーです。

読書案内

今回は3冊紹介します。2冊はぼくが読みやすいと思った『ツァラトゥストラ』の翻訳の上下巻です。

一冊はぼくの知り合いでもある、飲茶さんのかいたニーチェ論です。

『ツァラトゥストラはこう言った(上下巻)』

『ツァラトゥストラはこう言った(上)』(岩波文庫)

『ツァラトゥストラはこう言った(下)』(岩波文庫)

ぼくが感じた最も読みやすい『ツァラトゥストラ』の翻訳。ぜひ一読あれ。

『「最強!」のニーチェ』

『「最強!」のニーチェ』(水玉舎)

最高のニーチェ解説書です。著者の飲茶さんは、自分の体験に引き寄せてニーチェを読んでいるのですごくわかりやすいのです。

以上、ニーチェの超人の解説でした。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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