人文科学系、主に哲学の専門用語の解説を中心とした雑記集

ことばとは記号である|記号の特性について考える

2021/05/13
 
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どうもこんばんは、たかはしさとしです。仕事も慣れてくると中だるみになりますね。いかんと思い、気合を入れて力を出します。寒さも結局大阪は落ち着いていますね。中途半端にあったかい晩秋の夜にこの記事を書いています。

ことばとは何か

唐突ですが、ことばとはなんでしょう?ことばとは〇〇である、と断定して答えるのは意外と難しいと思います。今日はこのことばについて考えていきたいと思います。言語学や言語哲学の領域に入る話も少しだけやっていきます。

たとえば、ことばとは主観である、と言ってみましょう。これは間違いありません。ところがことばが人々に共通して分かり合えるものでなければ、ことばは通じません。つまりことばには客観性があるということです。ことばとは主観である、というのは間違いありませんが、ことばは客観性ももっているから、100%主観ではありません。そう考えていくと、ことばとは主観であり、同時に客観的な側面ももつ、というのが正しい言い方となります。

また別の面で考えると、ことばとは思考である、と言い切ってみましょう。ことばがなければ思考は成立しないでしょう。少なくとも、論理的な思考というものはことばがないと成立しません。ところがですね、思考とは意識の一側面と言い換えることができるでしょう。そうすると、ことばは意識的にぼくらが考え出したものではないのです。つまり、ことばは文化や伝統などと同じで、ぼくらが無意識的に先祖から受け継いできたものに他ならないのです。言語とは意識的な思考の限界を形作ると同時に、無意識下に受け継がれてきたものである、とひとまず言えるでしょう。

こういう風に考えていくと、ことばとは〇〇である、とことばの述語にあたる部分をぴったり言い当てるのは難しいですね。このことばの定義といいますか、性質をぴったり言い当てた人がいます。今日はことばの性質について考えぬいた言語哲学者ソシュールと、ソシュールの代表的な概念(用語)について見ていきましょう。

ことばとは記号である

スイスの言語哲学者ソシュール(1857-1913)は、ことばとは記号である、と指摘しました。記号とはフランス語でシーニュと言います。シーニュと関連して、シニフィエシニフィアンという言葉をソシュールは使います。シニフィエとは記号が意味されているもののことです。対してシニフィアンとは、記号が意味しているもののことです。モミジの木があるとします。その全体を🌲として表現するなら、モミジの木のシニフィエは🌲です。モミジの木がシニフィエは、”モミジノキ”という音や”モミジの木”という文字です。正確にはこのシニフィエとシニフィアンが対になったものを記号と呼びます。

シニフィエとシニフィアンのつながりに必然性はない

シニフィエとシニフィアンはある言語体系において、つながっています。ところが、このつながりには必然性は全くない、とソシュールはいいます。たとえば海があるとします。”うみ”という音と、海という表現が指し示す内容がつながっている必然性は全くないわけです。

ところがある言語体系のなかにおいてはシニフィエとシニフィアンは必然的につながらないと言語が機能しないんです。海ということばが、天空も含む概念だと勝手に想像して付け加えることが許されたら、日本語が成り立たないですね。このようにシニフィエとシニフィアンのつながりは必然性はないが、ある言語においては必然的につながっていないといけないというのが記号の特質なのです。

シニフィエは客観的な事実、シニフィアンは主観的なことばの表現そのものだと考えよう

いきなりシニフィエとはシニフィアンとか出てきて、なんだそれと思った人が多いと思います。

思い切って単純化してしまえば、シニフィエとは客観的な事実であり、シニフィアンは主観的なことばの表現そのものなのです。

ドイツの哲学者イマヌエル・カントは”認識が対象に従うのではなく、対象が認識に従う”と言いました。認識とはことばの主観的な部分そのものです。対象とは客観的な事実と考えてください。言語が存在して、人々の共通の枠組みとなって以降は、シニフィエがシニフィアンに従うのです。つまり客観的な事実は、主観的なことばの表現によって作られるということです。さらにいうと、客観的な事実とは世界のこと、主観的なことばの表現とは私のことですから、世界は私によって作られている、ということになります。

以上、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

たかはしさとし しるす

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