人文科学系、主に哲学の専門用語の解説を中心とした雑記集

近代哲学の諸流派 フランスのモラリスト/モンテーニュ

2021/05/13
 
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こんばんは、お久しぶりです。仕事が少し忙しくなってきて書くのが億劫になっていた今日この頃。でもせっかくなので書かないと損!ということでさっそく筆を進めてまいりましょう。

前回はオランダの哲学者スピノザについてみていきましたね。見ていない人は以下の記事を読んでみてくださいね。



さて、今日はフランスのモラリストについて書きたいと思います。時代は少し前後しますが、フランス・ルネサンス期の思想家モンテーニュを例にとって近代哲学の流れを考えたいと思います。なお、次回書く人は決まっております。モンテーニュのあとといえば、パスカルしかいません。

ではさっそく見ていきましょう。


モラリストとは何か

モラリストとは直訳すれば道徳家のことです。もちろんモラリストはモラリストなりの道徳を大事にしたのですが、特に16世紀から17世紀にかけて活躍したフランスの思想家たちをさすことが多いです。モラリストは自由な表現形式で知られ、随筆(エセー)、格言(マキシム)、警句(アフォリズム)といった様々な手法を用いて自らの思想を表現しようとしたのでした。人間本来の生活や心情を観察して、人間の生き方や人生を探求した思想家たちを特にさします。

代表的思想家は今回取りあげるモンテーニュ、次回取り上げるパスカル、ラ=ロシュフコー。ルネサンス的文化人の延長線上に位置する思想家たちだと言っても間違いはありません。キリスト教の精神と、ローマやギリシャの素養を身に着け、その二つのバランスの取れた理性的で健全な人間性とは何かを飽きなく追求しようとしました。


モンテーニュという人物

name="CgnJS">モンテーニュ(1533-1592)はフランスのモラリストです。領主の家に生まれ、ボルドー市長にもなりましたが、38歳で引退しました。その後は屋敷内の塔に引きこもって読書と思索に明け暮れる日々を送りました。そうして完成した著作が彼モンテーニュの代表作『エセー』であります。

私は何を知るか」(クセジュ)をモットーに、常に疑って独断を避けようとしました。こうした態度を懐疑主義と呼びますが、モンテーニュの懐疑主義は寛容の精神であふれている素晴らしいものでした。

3つのキーワードをおさえることができれば、モンテーニュの思想の骨格はつかむことができます。そのキーワードとは、”クセジュ””懐疑主義””寛容”であります。一つずつ見ていきましょう。


クセジュ(私は何を知るのか)

モンテーニュの主著『エセー』に出てくる懐疑主義を表す言葉のことです。

人生や世界は、流動的で常に変化する恒常性のないものです。さらに、不完全な人間の理性では不変の真理を完全に認識することはできません。だからこそ、モンテーニュは「私は何を知るのか」という疑問文のみが、人間にとってもっともふさわしい命題であると考えました。この言葉の意味するところは、断定を差し控え、真理の探究をあきらめるのではなくて、理性の傲慢、つまり決めつけ、独断を避けようとして、バランスの良いより深い真理を探究し続ける態度を表すものです。


モンテーニュの懐疑主義

懐疑論、もしくは懐疑主義とは、人間の感覚や理性によっては、普遍的で絶対的な真理を把握することはできないという考え方のことです。


name="FoGjx">古代ギリシャでピュロンという人が説きました。モンテーニュはこの懐疑主義を復活させた人物ですが、彼の懐疑主義の主旨は、独断を避けることに置かれていました。つまり、自分の独断を常に疑い、より深い真理はないかを探求しようとするものでした。そういった意味で、モンテーニュの懐疑主義は単なる相対主義ではなく、人間の可能性を信じたポジティブな懐疑主義とでも呼べるのではないでしょうか。

寛容さ

モンテーニュは人間の狭く偏った心が戦争や残虐な行為を引き起こすと批判しました。モンテーニュはこのような偏狭な心を捨てて、独断や極端に走らない中庸の立場を守れる人間になることを目指しました。すべての行為に価値があると考えてすべてを受け入れる重要性、つまり寛容性が大事だとモンテーニュは説きました。

モンテーニュの寛容論はヴォルテールの『寛容についての書簡』に多大な影響を与えております。


主著『エセー』

別名『随想録』とも呼びます。3巻からなります。はじめはストア的、自己克己や禁欲、次に懐疑主義、そして最後に自然への感謝の気持ちといったエピクロス的快楽主義が説かれています。


モンテーニュのまとめ

フランス自由精神の具現化した人物がモンテーニュです。モラリストだったモンテーニュの核となる考え方はこうです。

自分の決めつけを常に疑いなさい。人間の可能性を信じるがゆえにむしろ疑わないといけません。独断を避け、より深い真理に達するために疑うのです。そして、偏狭な立場を捨てて他人の思想や宗教を受け入れられたとき、真の平和が訪れ、寛容な社会が実現するでしょう。

以上、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

次回はパスカルでございます。お楽しみにー!



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