人文科学系、主に哲学の専門用語の解説を中心とした雑記集

ソクラテスはなぜ裁判にかけられて、どんな弁明をしたのか|岩波文庫『ソクラテスの弁明 クリトン』久保勉訳 読書ノート1

2022/02/18
 
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どうもこんばんは、高橋聡です。前回までは心理学に関するまとめの表を投稿してきました。今回は今私が読んでいる岩波文庫の『ソクラテスの弁明』をとりあげて、この読書ノートをここに公開したいと思います。

ソクラテス裁判について

古代アテナイでは、ペロポネソス戦争敗戦や三十人政権による政治混乱の責任を追及する動きが強くなり、ソフィストや哲学者などの異分子を糾弾、排除しようとする傾向が強まった。

ソクラテスはペロポネソス戦争での敗戦の責を負ったアルキビアデス、三十人政権の主導者クリティアスと付き合いがあり、彼らの教育的指導者だと考えられていたために、紀元前399年、アテナイの民衆裁判所で裁判にかけられることになってしまった。

『ソクラテスの弁明』について

『ソクラテスの弁明』は完全な対話編ではない

『ソクラテスの弁明』読書ノート

この読書ノートは岩波文庫に付されている1~33の章番号を参照に書かれています。それでは読書ノートを早速見ていきましょう。

1.告発者には真実が全くない

法廷の言葉遣いにはなれていないソクラテスは、自身の発言が真実かどうかにのみ注意を払ってほしいと説明する

旧い弾劾者への反論(2~4)

2.旧い弾劾者と新しい弾劾者の区別

旧い弾劾者とはアリストファネスやアテナイの大衆

新しい弾劾者とは今回の裁判の主訴人たち3人

まずは旧い弾劾者に対して話す

・そうして私はまず後者に対して弁明しなければならぬという私の意見に同意せられたい。(p15)

・とにかく私は国法に従い、そうして弁明しなければならない。(p16)

3.旧い弾劾者の言い分の検討

・曰く、「ソクラテスは不正を行い、また無益なことに従事する、彼は地下ならびに天上の事象を探求し、悪事をまげて善事となし、かつ他人にもこれらの事を教授するが故に」。

上記の非難は全く当たらないとソクラテスは主張

実際に他人にそのようなことを教授しようとソクラテスが語っていることがあるかをアテナイ市民たちに確認するように求める

4.ソフィストはお金をもらって人を教育する

ソクラテスにはソフィストのような能力もないし、ソフィストのような振る舞いはしたことがない

☆裁判に至るまでの経緯(5~10)/デルフォイの神託と無知の知(5~9)

5.ソクラテスに対する名声や悪評の根源→超人的智慧ではなく、人間的智慧

デルフォイの神からの神託によれば、「ソクラテス以上の賢者は1人もいない」

6.上記の神託を確かめるために、政治家をまずは訪ねる

そこで相手が無知だと感じて、相手が無知であることを説明しようとして、相手に憎悪される

・とにかく俺の方があの男よりは賢明である。なぜといえば、私たちは二人とも、善についても美についても何も知っていまいと思われるが、しかし彼は何も知らないのに、何かを知っていると信じており、これに反して私は、何も知りはしないが、知っているとも思っていなかったからである。されば私は少なくとも自ら知らぬことを知っているとは思っていないかぎりにおいて、あの男より智慧の上で少しばかり優っているらしく思われる。(p21)

7.その後も様々な人に憎悪されながらも歴訪する

神託の意味を明らかにするため。識者の評判のある人のもとへ訪れる。

ここで有名な人はほとんど知見を欠いていて、世間的に尊敬されることのない人のほうが知見において優れていることをソクラテスは指摘する。

政治家の次は詩人を訪ねる。しかし彼ら詩人は自ら語るところの真義については何も理解がないことにソクラテスは気づく。

政治家と同じく、最大の智者を自認する詩人もまた、無知の自覚がない点で、ソクラテスのほうが優れている

8.最後に職人(手工者)を訪ねる

ところが結局、政治家や詩人と同じように無知の自覚が彼らにはないことを知る。
智慧と愚昧が両方ないままか、智慧と愚昧を併せ持つか、どちらが良いかソクラテスは考えて、前者をソクラテスは選んだ。

9.有識者がソクラテスの敵となる

こうした行為によって、ソクラテスにはたくさんの敵ができ、誹謗が起こった。相手の無知を論証するソクラテスをみていた人は、ソクラテスは賢人であると思って、そのように噂を広めた。

最大の賢者は、例えばソクラテスのごとく、自分の智慧は実際何の価値もないものと悟った者である。(p24)

10.富裕市民の息子たちによる模倣

富裕市民の息子たちがソクラテスを模倣して、その試問で無知を暴かれた人びともまた、「青年を腐敗させた」としてソクラテスに憤った。それに加えて無知を暴かれた人たちは、ソクラテスに哲学者に向けられがちな非難を持ち出してきてソクラテスの罪にしてしまった。

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