人文科学系、主に哲学の専門用語の解説を中心とした雑記集

仏教における四つの真理の教え

2017/08/13
 
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どうも、哲学エヴァンジェリスト高橋聡です。前回は三宝と三学について見てきました。それぞれ仏教が大事にしてきたものでしたが、三宝に関しては仏法僧、つまり神など超越的なもの、その超越的なものについての教え、聖職者集団と言い換えれば必ずしも仏教だけのものではありません。また三学にしても戒定慧、ルールと精神統一、智慧の教えということですから、これもインドの宗教や世界宗教には備わっているものです。

では、完全に仏教を仏教たらしめるものとはなんでしょうか。それが四法印という教え、考え方です。4つの最も大事な仏教的な真理ということです。次の四つです。

  1. 一切皆苦
  2. 諸行無常
  3. 諸法無我
  4. 涅槃寂静
ではさっそく今日も見ていきましょう。

四法印

一切皆苦

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一切皆苦とは、人生のすべては苦(ドゥッカ)である、ということです。なんて厭世的な考え!と感じる方も多いでしょう。厭世的だという指摘のすべてが否定できるわけではありませんが、だから楽しいこととか幸福の存在を否定しているわけではありません。ここでいう苦とは、欲求が永続した際、絶対に満たされることがないことを指します。この世で生存する上で必ず欲求はつきません。欲求のあるところに苦があるわけですから、人間の生存状態はすべて苦なのです。

実際問題、昔より苦は減った、と考える人は多いかもしれません。でも現代のように生活水準が上昇しても、苦は必ずなくならないのです。なぜなら、そこに人間の過度な欲求があるからです。どんなに生活を合理化しても、新たな苦が生じてくるようになっているのです。

簡単にいえば、お釈迦様はこういう人間が生きていく上で苦が絶えないことが未来においても永劫続くことを看取されて、「一切皆苦」ということばであらわされたのです。

諸行無常

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ではこの苦を完全に取り除くにはどうすれば良いでしょうか?

お釈迦様は苦を取り除くためには、物事の正しい見方を知らなければならないと指摘したのです。それが諸行無常と諸法無我という教えです。

諸行無常とは、この世に存在するすべてのものは、つねに時間的に刻々と変化しているということです。人はある人やものを見るとき、どうしてもそれが常住不変のものと見てしまいがちです。でもそうではなく、ものは常に消滅と変化の可能性を内在している。これが苦の一つの原因です。

人間の苦しみの原因である老いや死もまた常住不変が正しいと見るから生まれるのではないでしょうか。若いときの状態が変わらないから老いてその状態がキープできないと苦しみに感じる。でも諸行無常を自覚していると、それは苦からもしれませんが、あたり前のことであり、気にしすぎることもないことがわかります。

お釈迦様が苦行ののち、菩提樹で禅定をしていて悟った真理とは諸行無常と縁起説だと言われています。それくらい重要な真理です。

諸法無我

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諸行無常と関連する教えが諸法無我です。諸法無我とは、一切のものには不変の自己とか本体といったものはない、ということです。
だいたい人間が一番変わらないと思っているものは自分自身(自我)ではないでしょうか。環境や世界が変わっても、自分自身は変わらないのではないか、と考える人は多いはずです。簡単に言えばお釈迦様はその自我や自分自身、本体といったものを人間の妄想が作り出した概念だと看破するのです。

死が苦しいのは結局、自分の生命だけは変わらないで存続してほしいという欲望があるからです。だからこそ、やがて死へ移行する生存そのものが苦しみになってしまいます。

涅槃寂静

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涅槃とは、ニルヴァーナと呼ばれる状態のこと。人の苦のもとである煩悩の火が完全になくなった状態です。人間の生存への執着から解脱した状態です。

ここからは私見が入りますが、煩悩とは、欲望そのものではありません。欲望にとらわれて物事の見方が変化し、誤った行動を取っている状態のことです。だから、煩悩の否定とは、欲望そのものをなくそうとすることにあるのではなく、むしろ欲望にとらわれることのない自由な正しい見方をして、正しい行動をとることです。

大乗仏教はだいたいこのような見方をとります。煩悩即菩提の境地です。

まとめ

四法印とは、仏教で特に重要な真理のことです。この四法印があるからこそ、仏教の法(真理)は展開されるのであって、その意味で根本的な真理ということになります。一切皆苦、諸行無常、諸法無我、涅槃寂静の四つの教えについてよく黙想してもらえたらと思います。

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