人文科学系、主に哲学の専門用語の解説を中心とした雑記集

インド哲学を知ろう4〜古期ウパニシャッド・輪廻、業、ヨーガ

2017/08/25
 
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どうも哲学エヴァンジェリスト高橋聡です。前回は梵我一如についてお伝えしました。今回はインド人の死後の世界感、つまり輪廻や業について考えましょう。

輪廻

ブラーフマナ時代になると、死は邪悪であり、罪であると考えられるようになりました。ヴェーダの時代には死後の心配などほとんどしなかったインド人ですが、ここに至って来世の好ましい状態が永遠に続かないかもしれないという心配をする人たちが出てきます。

ウパニシャッドには、死や再死に関する重要な概念が含まれています。新たな死に対する恐れに付け加えて、繰り返す死、この世に再生して現代と身分の違った生き方をし、幸せの度合いも異なる生き方をするようになること、あるいは獣類として生存することもまた避けられないという輪廻信仰が生まれました。

古期ウパニシャッドの再生の説でとりわけ重要なのは、道徳的意味と社会的意味です。輪廻説により、この世での生存の状態の違いを説明しようとします。この世で罰をうけない悪人がどこで罰せられるのか、正義のものはどこで報われるのかという問題に解答を提出し正義感を基礎付け、悪の問題に解決を与えて苦と不幸の存在の理由づけを行うものとなります。

どこから、あるいはなぜ苦や不幸が有徳な生活を行うものに起こるのか。インド人にとっては、自分を支配する勢力があり、その勢力が苦を惹きおこすと考えられました。それは見えない力であり、一旦発動すると自力では避けることのできない自然の力としてその人に付着するのです。善行や悪行も見えない力が働いて起こるものだと考えられました。そのため、「行為」は宗教的に見て極めて重要な意味を持つようになりました

善業によって善となり、悪業によって悪となると「業」について考えられました。さらに業は行為そのものを意味するだけではなく、行為が死んだあとの生に決定的をもたせた応報の原因なのです。我々を取り巻く自然界で何が生じても、そこで我々が出遭うものは自らの業が作り出したなのです

解脱

死への恐れが確立した後、その恐れを克服しようとする願望が起こります。その願望を実現する手段が解脱です。真実を真実でないものと混同させ、死の支配からの解脱を妨げるのが、無知(無明)です。無知からの解脱こそ、人々の励むものとなりました。自己がすべての存在の本性と同一であると知ることは、人間を自力で解脱へと導くと考えられたのです。無知の者は、輪廻に止まる運命にあります。解脱のために必要な知識は、経験的な知識や、学問上の知識、散漫な知性では得られません。

輪廻の世界にとどまることは、これといった目的も新しい展開もなく、絶えず同一の点に回帰する世界であり、個々人は必ずや母胎・出生・病・死の苦悩を繰り返して経験しなければなりません。これは人間にとって永遠の不安であり、無常であり、不快なのです。対して解脱することで静寂、世界過程の完全な終息を迎えることができます。

インド文化において、「法」(ダルマ)と「善行」の教えが業と輪廻の教義に結びつきましたとは自然界の出来事、社会制度、行為などのすべてがいかなる時も基準としてしたがっている太古からの規範、永遠の法則の成果であって、その現れたものを指します。法に対する違犯は好ましくない結果が生まれます。法に対する違犯は違反となった行為があがなわれない限り、様々な面で問題として残ります。

そうして法を守ることがすべての出発点となったのです。人が輪廻からの解脱を達成するため、さまざまな道があると考えられました。ただしマヌ法典によれば、罪を滅ぼす最上の手段は苦行とヴェーダの学習であるといいます。

ヨーガ

ヨーガとは、訓練された行為、また一定の方法に基づいた錬成の意味です。ヨーガは各個人が内的な深い思索、精神統一、エクスタシーによって深い宗教的体験を得て、見えざるものとの合一に達しようとする努力から生まれました。梵我一如の思索が登場した時、ヨーガが解脱を求める人々に採用されました。仏教もまた、一個のヨーガ教程なのです。このように、肉体的精神的機能をすべてコントロールし、全力集中して一段と高い目的に向かって精力を集結するのがインド精神の特徴です。

ヨーガとは『インド思想史』(J.ゴンダ著、岩波文庫)によると次のような過程です。

ヨーガ行者は本性と感情に基づく生活を規制し、意識下の状態を登場させて、個人存在の観念を消失させ、正常を超えた”宇宙的”、あるいは”神的”意識、個人を超えた存在の意識へと移行する。同時に、筆舌を越え、分析dけいず、ただ比喩だけで表される忘我の状態に到達する。

ヨーガ行者は業と輪廻にとらわれた存在ではあるが、力を集結して正しい技法を用いて輪廻を打ち破って抜け出そうとする人です。

古期ウパニシャッドの各種概念のまとめ

死への恐れが出るにつれ、死後も永遠の転生を繰り返すという輪廻の考え方が生まれました。人は前世以前にその人が行った行為によって、幸せな状態になったり、不幸せな状態になったりすると考えられました。その行為に関する考えが業です。輪廻と業は死、あるいは死後への恐れから生まれたものですが、その恐れを克服する方法として解脱が考えられました。無知からの解脱こそ、輪廻から解脱するものと考えられました。無知を解消する一番の方法は、法を知り、また法にのっとって行動することです。解脱を目指す人々が実践する行為がヨーガです。

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