人文科学系、主に哲学の専門用語の解説を中心とした雑記集

心的外傷後成長|心理学の用語解説

2020/12/14
 
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どうもこんばんは、高橋聡です。本日は一日家でゆっくりしていました。久々にゲームとか起動したんですけど、結構面白いですね。まさしく集中するフローに入るのが簡単なのがゲームの特徴でしょう。ぼくはオンラインゲームをやっているので、他の人との協力プレイなどで一気に時間が過ぎ去ってしまいます。たまにならいいけど毎日はやはりつらいなと思う今日この頃でした。夕食に牡蠣の入ったグラタンだったのですが、とてもおいしくて幸せでした。あなたは今日一日あった中で感じた幸せを挙げることができるでしょうか?

前回の記事

さて内容に少しずつ入っていきましょう。前回は適応的防衛機制といって、ストレスを感じた時に働く無意識な人間の機能についてみてきました。以下にリンクをはっておきます。
まだ読んでいない方はぜひ一度でもよんでみてくださいね。

心的外傷後成長

それでは本当のテーマについてみていきましょう。今日の用語は心的外傷後成長と言います。PTG、Post Traumatic Grossと言われることもあります。

われわれ人間は日常的にストレスを経験しています。その中には深刻なストレスや困難があるかもしれません。しかし、永久にわれわれの人生の方向性を変えてしまうようなトラウマとなる出来事に直面することもあります。たとえば東日本大震災や阪神淡路大震災の経験、地下鉄サリン事件の経験など人為・自然の出来事の経験を問わずにトラウマとなる出来事は存在するでしょう。

トラウマとなる出来事を経験したら、私たちの世界の見方そのものを打ち砕いてしまうのです。世界は公平だという信念などは真実味がなくなって、多くの目標は重要でなくなるかもしれません。

心理学ではこのような経験を受けた人が心的外傷後ストレス障害(PTSD)という心の病をり患して生きていく人も中にはいるのです。

ポジティブ心理学では、このようなトラウマとなる経験から何かを獲得して、切り抜ける人がいることに注目します。いわばトラウマをばねにより高次の成長を遂げる人がいるのです。この現象を心的外傷後成長と呼びます。

多くの人は逆境の後に非常に強くなったように感じて、自分自身の能力に自信を深めます。同じような状況において、他者への同情が増したという人もいます。自分の持っているものに感謝するようになって、当然と思ってしまいがちな人生の小さいことにも感謝を感じることができる人もいます。さらに、トラウマとなる出来事の影響で、意味や精神性を見出して、一貫性があって満足させえてくれる世界観や哲学を構築しようとする人もいます。トラウマはこのように悪いものだけではなく、良いものも生み出すのです。

多くの宗教家、宗教学者、哲学者、作家たちは苦しみの中に発見される肯定的な側面を強調しました。仏教において苦を知ることは悟りへの第一歩です。ユダヤ教においては苦は神からの試練であり、この試練を潜り抜けることで信仰が強くなります。ヒンドゥー教やジャイナ教では苦行を励行しています。

オーストリアの精神科医ヴィクトール・フランクルは『夜と霧』において、ナチスの収容所へでの体験について書きました。自分が一人の人間として扱われずに存在を支えるものがすべて失われたとしても、人が人間らしさや生きがいを求めることをつづった書です。

ではわれわれはどのようにしてトラウマとなる経験から脱して、人として成長することができるでしょうか。

まず、起きた出来事を理解しようとすることから始まります。トラウマとなる出来事に対して正面から向き合うという第一歩が理解です。

その後、人生を全体として理解しなおそうとする試みや、「認知再構成」が起きます。内的な世界は再構築され、物の見方や自分自身も大きく変化します。このプロセスは意図的なものです。

フランクルはもう一つ重要なことは、逆境に対してどのような態度をとるかである、と主張しました。自分の態度を選択して、生きる態度こそ大事なのだというわけです。

トラウマとなる状況をチャレンジだと解釈できれば、人は心的外傷後成長を遂げやすくなります。

さらに重要な要素が、人からの支援です。共感に満ちた人間関係があれば、人を励まして、気持ちを吐き出して受け止めることができる環境があるので、上手に困難に適応できるようになる可能性が高くなります。

心的外傷後成長は、精神的健康だけ絵ではなく、身体的健康にもつながります。

ここで注目すべきことは、成長と苦悩は別のものだというわけではなう、共存するということです。実際、獲得と喪失のバランスをうまく取れれば、最適な形で適応できるといいます。トラウマ自体いいものではありませんが、意義深い個人的変化をもたらす場合もある、ということです。

以上、今日は心的外傷後成長についてみてきました。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

高橋聡よるにしるす

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