うつ病のメカニズムを明らかにしたセリグマンの学習性無力感の研究|心理学の用語解説
2021/05/08
どうもこんばんは、高橋聡です。今日からぼくはゴールデンウィーク明けの出勤です。昼間にビルの前にある御霊神社にお参りして、感謝を捧げてきました。すべての横のつながりは感謝から始まります。感謝は大事ですね、ということを確認して今日の本題の前に前回の記事から見ていきましょう。
前回の記事|知っていると人生を豊かにする真の幸福の5つの要素・セリグマンのPERMA理論
前回の記事では、PERMAという真の幸福に近づく5つの要素を取り扱いました。これを考案したセリグマンは、今回扱う学習性無力感の概念をていしゅつしたことで有名になったのでした。前回の記事のリンクを貼っておきます。
知っていると人生を豊かにする真の幸福の5つの要素・セリグマンのPERMA理論|心理学の用語解説
まだ読んでいない方は是非読んでみてくださいね。
学習性無力感
セリグマンやマイヤーという実験心理学者は、ポジティブ心理学ができるはるか前に、動物を用いた実験で学習性無力感という概念を発見しました。その動物実験の概要からお話ししましょう。イヌを用いた動物実験
セリグマンらが行った実験についてみていきましょう。まずイヌをグループAとグループBに分けます。実験1日目、グループAのイヌはハンモックに吊るしたまま電気ショックを与え続けます。グループBのイヌはハンモックに吊るしますが、何も電気ショックは与えません。実験2日目になって、グループAとグループBの両グループのイヌを、低い柵で仕切られた箱の中に入れます。その箱の中では、低い柵を乗り越えて別の方の場所に行くことで電気ショックから逃れることができる仕組みです。柵を乗り越えずにじっとしていたら、電気ショックを受け続けることになります。
そうするとグループBのイヌはすべて電気ショックの待避ができる行動をとりました。グループAのイヌのうち、3分の2は何もせずにただ電気ショックを受け続けました。残りの3分の1のイヌは、なんとか動き出し電気ショックを回避する行動を見つけました。
ここで1日目に電気ショックを受け続けたイヌは、何をしても電気ショックから逃れられないことを学習した、ということです。言い換えれば無力感を学習したわけです。そしてこの無力感の学習は人間の場合、うつ病と呼ばれるのです。この学習性無力感の発見によって、うつ病の代表的なメカニズムが解明されたのでした。
ところが1日目に電気ショックを受け続けたイヌでも、2日目に回避行動を取った3分の1のイヌがいます。無力感を学習したのにも関わらずに、回避行動を探ろうとしたこのイヌは希望回路を持つ、と後年セリグマンは考えました。ここについては今回詳しく触れません。
学習性無力感の定義と意義
学習性無力感とは、失敗や嫌な経験を経験したことが原因で、何をしてもうまくいかないと諦めてしまい、何事に対してもやる気がおきない無気力状態を指します。この学習性無力感、あるいは学習性悲観主義とも呼ぶことのできる現象は、セリグマンによれば、学習性の楽観主義の研究へとつながる大事な一歩だということです。
悲観主義的な行動が学習により引き起こされるならば、楽観主義的な行動や考え方もまた学習によって引き起こすことができるんじゃないか、という新たな研究の可能性を考え出すに至ったわけです。
学習性無力感はまさにネガティブ心理学の範疇ですが、同時にポジティブ心理学への道を開いたのでした。
学習性無力感・講評
セリグマンは学習性無力感を発見しました。うつ病の大きなメカニズムの一つとして学習性無力感の理論はうつ病研究を大きく進歩させました。うつ病の治療薬開発などにも役に立った実験心理学からの知見が学習性無力感という理論だったのです。ネガティブなものを0の地点に戻す心理学からスタートしたセリグマンはアーロン・ベックの認知療法を促進しました。やがてセリグマンは発想を転換して、学習性の無力感や悲観主義の存在から学習性楽観主義の研究へと進みます。そこで開発されたレジリエンストレーニングなどは精神疾患の予防にとても役立つものだとわかりました。次回は学習性楽観主義について書いていきたいと思います。以上、学習性無力感について記事を書いてきました。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
高橋聡記す
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