人文科学系、主に哲学の専門用語の解説を中心とした雑記集

ニーチェ 「汝盗むなかれ」

 
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 「このような振る舞いがわれわれの第一生存条件に属す」という信仰。不道徳は「没落をもたらす」を意味する。いまや、これらの命題がそのなかに見いだされたすべての共同体は没落した。これらの命題の個々のものは、つねに新たに強調された、新たに建てられたいずれの共同体もそれらを、例えば、「汝盗むなかれ」を再び必要としたが故に。社会(例えばローマ帝国)への共同感情が要求され得ない時代にいたって、衝動は宗教風にいえば「魂の救済」に、あるいは哲学風に弁ずれば「最大の幸福」に身を寄せた。(ニーチェ)
 「汝盗むなかれ」はずっと言われている。ただし、「盗むなかれ」に何か価値があるのではない。まずは、共同体の共同感情を傷つけないように、それを生存条件に属することにしてしまう。ニーチェにとって道徳とは「生存条件に属」させることだから。ローマの時代になって、共同感情が問題じゃなくなったとき、「汝盗むなかれ」はキリスト教的な魂の救済に必要だから求められる。自分の魂に関するものとなった。そして、最大多数の幸福に関わる意識・良心から、「汝盗むなかれ」は必要とされた。
 その発生はどこか。共同体が存在していた時代は、共同体からの追放が発生。魂の救済が問題となっている場合、教会などから発生する。最大の幸福の場合、最大幸福という理論と司法行政の制度の組み合わせの中で発生する。
 その由来は、生存条件としてそれを信じる信仰である。
 「汝盗むなかれ」でさえ時代とともにその意味付けは大きく変わる。もちろんだからといって盗んでいいことにはならないが、そこには信仰があるということを忘れてはならない。道徳は、なんらかの信仰であるということ。それゆえその枠組みだけからものの良し悪しを判断するのではなく、視点をずらしてみてみることが必要だ、ということをニーチェはいいたいのかもしれない。
榎並重行『ニーチェって何?』を多いに参照

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