功利主義の概要|サンデル『これからの「正義」の話をしよう』を読む前に知っておくべきこと1
どうもこんばんは、高橋聡です。秋も深まり、すっかり寒くなってきました。体調には気をつけて参りましょう。
さて、前回に引き続きサンデルの『これからの「正義」の話をしよう』(以下、『正義』)を読む前に知っておいたほうがいいことをお話ししましょうと思います。今回は功利主義のお話をします。
功利主義とは
功利主義を唱えたのは18世紀のイギリスに生まれた哲学者ジェレミ・ベンサムです。
その社会集団の全成員の福利を最大化する選択をすることを正義として重視するのが功利主義です。
全成員の福利は選択の後に生じる結果ですから、功利主義を帰結主義とも呼びます。
現代の考え方では主流派経済学と関係が深いのがこの功利主義です。
それでは功利主義の4つの特徴を少しずつ見ていきましょう。
功利主義の特徴1|福利の最大化
福利、つまり功利主義が感じる幸福は個人が感じる喜びや快楽です。
この個人が感じる喜び・快楽の総量が多ければ多いほどその社会は正義に適った選択をしている、と功利主義では考えます。
社会全体の幸福は結局、社会の全構成員各人が感じる快楽の総量です。苦痛はマイナスの快楽として考えます。
つまり快楽の総量から苦痛の総量を差し引いて残ったものが純粋な社会全体の幸福だというわけです。
この社会全体の幸福を最大するために行動や政策を考えるのが功利主義者だといえるでしょう。
功利主義の特徴2|帰結主義
二つ目に挙げる帰結主義は、正しさを結果、功利主義の場合は感じた快楽から判断する考え方を指します。
社会で幸福の総量を最大化する結果を残すための個々人の行動を規定しようとするのです。結果から今とるべきことを考えようとするのです。
功利主義の特徴3|経済指標第一主義
経済学で用いられる効用関数も功利主義の考え方を応用して作られた考え方です。
GNPやGDPの最大化を求めるのも、GDPなどが幸福の総量を表していると考えている一種の功利主義だといえるでしょう。
そのGDPが伸び続ければ幸福の総量が増大するからよい、という考え方、つまり経済成長が永続するのは良い政策だ、というのは功利主義的な発想から来ているものです。
功利主義の特徴4|最大幸福原理
ベンサムは功利主義を唱えた初期には「最大多数の最大幸福」というフレーズを使いました。
これが最大幸福原理の中身です。
「喜び-苦痛=幸福」で、その幸福を最大化することが道徳の原理だと考えたのです。
功利主義の弱点|多数者有利・優先
功利主義の欠点もここで挙げておきましょう。
簡単に言うと、功利主義は「これが幸福だ」と感じる人が多い政策を採用することになる原理なので、多数者が有利で優先され、少数者が軽視されがちになります。それが最大の弱点といえるでしょう。
上記に記した功利主義の特徴をおさえて、サンデル『正義』を読んでいきましょう。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。