『選択本願念仏集』の読み方:各章の意図

仏教


さとやんです。『選択集』を読むシリーズの続きを記します。

今回は法然が『選択集』の各章をどんな意図で書いたのかを推測しながら、この記事に記したいと思います。『選択集』はすべてで16章あります。

16章は大きく分けて5つのブロックに分類できると私は感じます。

  1. 1章:聖道門と浄土門の分類
  2. 2章-7章:念仏の特異性
  3. 8章,9章:念仏者が備えるべき特質
  4. 10章-15章:念仏を選択すべき理由
  5. 16章:『選択集』のまとめ

一つずつ見ていきましょう。

1章:聖道門と浄土門の分類、浄土宗の教えの根幹

法然が1章で最初に引用しているのは、道綽の『安楽集』という書物です。

法然が引用する箇所の要旨を簡潔に記すと、以下の通り表現できるでしょう。

今までにさまざまな仏教の教えがあったが、なぜ悟って仏になる人は少ないのか。

なぜなら今までの仏教の教えである聖道門は、仏教の開祖釈尊が現れてから時間もたちすぎて、人々の理解力が低くなっている末法という時代に適した教えではないからだ。

阿弥陀仏の名を称える(念仏)を重視する浄土門こそが末法にふさわしい教えである。

道綽は聖道門浄土門という二つの仏教の形があることを明らかにしたのです。

そして法然はこの分類に則って、浄土門をみなに広めるために浄土宗を立宗したのです。つまり、今までの聖道門ではなく浄土門に入ることが悟りへの最短のアクセスであると言ったのです。

2章-7章:念仏の特異性、浄土宗の修行法

この第二のブロックでは念仏の特異性、功徳といったものが語られています。

2章は正行雑行という分類を紹介します。その文字が示す通り、正行はもっとも正しい修行法、雑行はそれ以外の修行法といった意味です。正行は念仏を含む浄土門の主要な経典に記された修行法のことです。雑行はそれ以外のすべての修行法です。

3章は称名念仏、つまり口に出して唱える念仏こそが浄土に往生するための最も優れた修行法だということが述べられています。この3章は阿弥陀仏の第十八願といわれる誓いが本願であることを示すと同時に、念仏とは口に出して阿弥陀仏の名を称えることであることを明らかにしている点が重要です。

4章は、すべての人は念仏を唱えるによって浄土に入ることができることを示しています。一向念仏とか専修念仏についても触れられています。

5章は念仏の功徳について、6章は念仏が末法に最適な修行法であることについて述べられています。

7章は阿弥陀仏が念仏するものを特に大切にしていることが書かれています。

結局この二つ目のブロックでは、念仏とそれ以外の修行法を対比して、念仏が選ばれるべき理由が書かれています。4つ目のブロックとかなり近しい部分があることは間違いありません。

8章,9章:念仏者が備えるべき特質、浄土宗の信心

ここは念仏者が備えるべき資質について書かれています。ただ法然は、念仏を称えることを意識していると、自然とこれらの特質は備わるということも言っています。

8章では三心という念仏者の心構えについて説かれています。9章は四修という念仏を行う際の実践法が書かれています。

8章では特に三心の二つ目である深心が大事です。また二河白道の喩えと呼ばれるところも非常に大事な箇所になります。

10章-15章:念仏を選択すべき理由、浄土宗の悟り

この4つ目のブロックでは、浄土宗の往生とは何かが書かれています。

10章では、阿弥陀仏が念仏を特に重視していることが、述べられ、現世で念仏をした際の効果について述べられています。

11章では、来世で観音勢至という二人の菩薩が友になるという、往生の来世の効果についてふられていて、12章は現在である末法で往生するために釈尊が念仏のみが残ることに関して記されています。

13章は念仏の善、14章では諸仏が念仏を選んだ理由、15章では念仏することで諸仏から念仏者が守られることが書かれています。

16章:『選択集』のまとめ

最後の16章は本書のまとめです。「略選択」と昔から呼ばれ、浄土宗の最も大事なことが書かれた部分だと信じられてきました。一枚起請文とともに最も大事な浄土宗の教えの根幹といえるでしょう。

末法の世には浄土門に入るのを勧める、ということが書かれています。

他には法然が善導という中国の高僧の著作に影響を受けたことが記されています。

最後に

最後に今回はブロックを5つにわけて考えてきました。

親鸞は『顕浄土真実教行証文類』という著作を残していますが、通常この書は『教行信証』と呼ばれます。

今回私が区切った『選択集』の一つ目のブロックは教、二つ目は行、三つ目は信、四つ目は証とかかわっていそうだな、とこの記事を書いていて気づきました。そうしたことも考慮にいれながら、本書を一章ずつ読み進めたいと思います。



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