人文科学系、主に哲学の専門用語の解説を中心とした雑記集

個人の自立と社会の発展は切り離せないー前期デュルケムの言いたかったこと

2017/08/01
 
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どうも、哲学エヴァンジェリスト高橋聡です。最近暑いですね〜。ほんと暑くてぐったりです。

そんな暑い今日は、フランスの社会学者エミール・デュルケムが何を言いたかったのかを端的にまとめたいと思います。

デュルケム

学生時代のあだ名は哲学者・形而上学者。同年代の哲学者ベルクソンとは同級生。そんなデュルケムですが、コント以来廃れてきた社会学を真の学問として確立させることを初期の大きな使命として活動していきました。この時期の代表作が『社会分業論』『社会学的方法の基準』『自殺論』です。

今回は『社会分業論』と『自殺論』を中心にみていきましょう。

社会分業論

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『社会分業論』の真髄。それは一体なんでしょうか。

個人が自立して、社会的な仕事を分担してやるようになればなるほど、社会は加速度的に発展する

ということです。言い換えると次のように簡素化できます。

個人が個人として自主性を持って活動すればするほど、社会ではさまざまな自由が生まれる

デュルケムがこの真髄を説明するために社会学的に使うものがあります。それはなんと法律です。法律を独自のカテゴリーの二つに分類して、原始社会から現代社会へと変遷するなかで、どのようにその二つのカテゴリーが意味あるのかを考察します。その二つのカテゴリーについて見てみましょう。

その二つのカテゴリーとは、抑止的法律復原的法律です。現代の刑法に代表される抑止的法律は、人を殺してはいけないから、殺人罪を規定した法律がある、という風に、社会的にマイナスな活動がなされないように作られた法律です。一方、復原的法律とは、例えば交通事故を起こして50万円の器物損壊をした際に、50万円を支払って、元に戻すようにできるようにとりはからうよう規定した法律です。民法や商法などがこれにあたります。復原的法律とは、要は元どおりに戻す回復命令を伴った法律です。

原始社会、古代社会で大半を占めるのが抑止的法律です。一方、社会が発展するにつれ、個人の自由が尊重され、抑止的法律に対して復原的法律の占める率がだんだん高くなってきます。なぜ抑止的法律が大半を占める社会では、個人の自由が尊重されないのか。デュルケムによると、原始社会は同じ特性を求める社会であって、個性(≒個人の自由)が輝くことはない、と言います。つまり、皆が同じ行動ができることを前提に構成される社会、それが原始社会です。社会が発展してくると、同質性よりも異質性が求められるようになり、近現代社会になれば、異質性が個性として輝くようになったのです。

つまり、抑止的法律は社会の同質性を保つためにあるのに対して、復原的法律は個人の自由を尊重する過程で生まれてきたと言えるのです。

またデュルケムは社会のキズナのことについても触れています。

原始社会では社会のキズナは同質性を守るために作られたが、現代社会では個性が担保され、社会的に違う役割を持って働くことから、他者との協力関係が必要になってきていて、それゆえに社会は真のキズナで結ばれている

ということをいいました。

実際、今の社会を見てみると、いろんな活動をしている人がいます。その活動のどれ一つがなくなっても社会は成り立たないといっても過言ではありません。デュルケムはそのことを社会学的に説明しようとしたのでした。

自殺論

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一方、『自殺論』の真髄はなんでしょうか。

自殺は社会的要因によって起こるものだ

自殺は個人的要因で起こるものでは決してない、自殺論の論調は読んでみるとこのように言っているように見えます。

ただしぼくの所感では、デュルケムは自殺は個人的要因で起こることをなんら否定はしていないと思います。ただ、個人的要因と思われる背後に必ず社会的要因が潜んでいる、ということを言っているのです。

言い換えれば、次のようにいえます。

個人的要因で起こると思われる社会現象は、すべてなんらかの社会的要因がある

この自殺論で最も重要な概念がアノミーでしょう。

アノミーとは、法の無視を意味するラテン語で、法律やルールなどが無規制状態にあることを指します。自殺論ではとくに、アノミーは経済の混乱や急成長によって、無規制状態に陥って心が落ち着く暇もなく、心の混乱状態になることを指します。

アノミー的自殺とは、社会の伝統的価値が崩壊して、それについていけなくなった人が精神的葛藤を経験し、起こす自殺ということです。

今のわたしたちが生きる時代もまさにアノミー状態ということができるでしょう。

そのアノミー状態をどう切り抜けるか。僕は結局、分業論で述べられていたように個人が個人の役割を全うし、そのような環境を整えることだと思っています。

まとめ

前期デュルケムは次のように言いました。

個人の自立と社会の発展は切って切り離せない。そしてそのような社会だからこそ、すべての社会現象は社会的要因から引き起こされることを自覚せねばならぬ

後期デュルケムはまた違った顔を見せてくれます。では今日はここまでです。

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