人文科学系、主に哲学の専門用語の解説を中心とした雑記集

本質を考えるための哲学入門

2018/11/15
 
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どうも、哲学エバンジェリスト高橋 聡です。今回も書物の紹介です。平原卓さんの著作『本質がわかる哲学的思考』の紹介をします。

前回は『武器になる哲学』という本の紹介をしました。こちらもよかったらみてくださいね。

では早速『本質がわかる哲学的思考』についてみていきましょう。

『本質がわかる哲学的思考』の要約

Twitterでの要約

最後に必読書と書きましたが、本当に理解しといたほうがいいポイントがおさえてあるので、哲学にちょっとでも興味があれば絶対読んだ方がいい本です。

「はじめに」と「序章」

この本は「はじめに」と「序章」に一番大事なことが書いてあると言っても過言ではないと思います。哲学を学ぶ意味とは何か、『本質がわかる哲学的思考』ではこう断言します。

哲学の根幹をなす思考の原理をつかみ、私たち自身の問題に取り組むための方法を洞察すること。ここに、哲学を学ぶ重要な意味がある。

哲学を直接現代の問題に応用することは難しいかもしれない。でも過去の哲学の思考のプロセスを学ぶことで、現在考えるべき問題を取り扱う際に役に立つ。そういうことを言いたいのです。

序章では、哲学の目的は「本質の共通了解」だと言います。本質とはシンプルに、「ある物事の中心をなす意味のこと」を言うのです。共通了解とは、納得を深めることです。つまり、本質について納得を深めることが哲学の目的なのです。

ここで大事なのは、本質についての正解がどこかにあると考えてはならないことです。絶対的な正解のぶつけ合いでは、「信念対立」を解決する方法はありません。だから絶対的な正解を見つける作業ではなく、納得を深め合うことが大事なのです。

この際に役に立つのが現象学が用いる手法です。現象学的還元と本質直観こそがぼくらの取り入れるべきものです。

平原さんは序章で哲学と科学や数学との違いをとても良い例えで示しています。

原子を1個、2個と数えるように、美を数えることはできない

数学や物理学での対象は数に還元できますが、哲学の対象である「真・善・美」は数えることができないのです。数えることができないからことばで表現したものを比較したりすることになりますが、人によって見るべき位置が変わるため、同じ真について論じても揺らぎがあるのです。

本編の面白いところ

第1章から第3章までありますが、面白いところを抜粋します。
  • 私たちにとって可能なのは、それぞれの経験に共通する意味の確信を言葉にして、相互に確かめ合うということだけであり、その方法が哲学的問答法(対話、ディアレクティケー)である
  • 恋愛とはよきものへの「狂気」である
  • 自由の自覚が進むと既存の価値観の根拠が失われるニヒリズムと呼ばれる状況が現れる
  • ニーチェは、私たちの認識は力が生み出す解釈であると考える
  • ニーチェが大事にした良心の核心とはずばり、約束を守る力である
  • ヘーゲルは何かがしたいと言う欲求がなければ自由の感覚をもつことはできないことを指摘した
  • 独善をヘーゲルは悪と呼ぶ
  • 前期ヴィトゲンシュタインは言語とは「世界のコピー機」であるという認識。後期ヴィトゲンシュタインでは、ある目標をめがけて行われる言葉による営みである「言語ゲーム」という概念を重視した。
他にもおもしろいこと、考えさせられる内容が書かれています。

『本質がわかる哲学的思考』を読む前に思っていたこと

本質と聞くと、どうしても「実存は本質に先立つ」というサルトルの言葉を思い出してしまい、人間の社会的にどう存在しているかが、人間の存在理由とか存在する意味を形作る、というイメージで本質を軽視してしまっていました。タレスの時代に哲学が生まれてから現在までずっと、「本質」についての絶え間ない思考のすり合わせの歴史が哲学だということを認識していましたが、どうしても本質という言葉にいいイメーイがありませんでした。

『本質がわかる哲学的思考』を読んで

変化したこと

本質を考えることの大事さを思い出した、ということです。哲学の主要な仕事の一つであり、現代もこの本質を捉える作業はとても有用なものだと再確認できました。実存も本質も、ともに見るべきものなんです。

行動すること

  • 哲学的議論を行うときは必ず一つの正解を想定しないこと
  • 現象学をもっと知ること

まとめ

ぼくが哲学に出会ったころに、こんなわかりやすい本があればよかったと思えるくらいの名著です。哲学の基本的な姿勢を知り、大事な概念もちゃんとおさえています。出てくる哲学者の数こそ少ないけど、是非哲学をもっと知りたいあなたにも読んでほしいです。

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