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リーダーの条件|シリーズ100分de名著で読む『貞観政要』2


どうもこんばんは、高橋聡です。すっかり夏の景色も遠ざかり、秋も深まってまいりました。このまま冬に突入しそうな雰囲気ですね。季節の変わり目なので風邪など引かぬように気をつけましょう。もちろんコロナウイルスも気をつけましょうね。

さて、前回は『貞観政要』の前提をみてきました。自らの兄弟を殺して皇帝になった太宗・李世民が立派な政治を行ったのが貞観の治でした。

李世民は善政をしかないと暗君として歴史に名が残ると思って、それを奮起にしてリーダーに必要な条件などを考えたのです。
今回はそのリーダーの条件についてみてきましょう。

君主と民衆は一体

リーダーとは何か。優れたリーダーの条件は何か。『貞観政要』を読んで太宗が出した結論から優れたリーダーに必要な条件を見ていきましょう。

太宗は即位後すぐに君主と民衆は一体であり、どちらかが倒れればもう一方も倒れる関係になっていることを指摘します。この認識があったからこそ、太宗は民衆を酷使せずに貞観の治とよばれる黄金時代を築くことができました。

『貞観政要』では、一番最初の巻第一君道第一第一章に太宗と部下との問答が出てきます。

「君主たる道というものは、必ずやまず民衆を憐れまなければならない。もし民衆を損なって、君主の身に奉仕されようとするのであれば、それは自分の股の内を割いて自分で食うようなものだ。満腹になっても死んでしまうであろう」

(講談社学術文庫版『貞観政要』石見清裕訳注,p45)

ここで太宗は民衆を足に、君主を腹になぞらえています。そしてどちらの存在も国家にとっては欠かせないものであり、一体であることを強調しているのです。そしてここで太宗は自分自身が贅沢をすることを戒めています。

太宗は続いて次にようにいいます。

「わたしはいつも、自分の身を損なう要因は外からのものにあるのではなく、悪はみな自分の欲望によるものと思っている。
(中略)…わたしは常にこう思うので、安逸(自分の勝手気まま)に暮らそうとは思ってはいられないのだ」

(講談社学術文庫版『貞観政要』石見清裕訳注,p46)

唐代において、民衆の基幹産業は農業であり、唐を支えたのは民衆のつくる農作物や税でした。見方をかえれば、民衆は生産階級であり、君主は民衆に頼る寄生階級なのです。太宗はそのことをわかっていたため、民衆を苦しめるような施策はとりませんでした。

自分はわかっていると過信しない

太宗は自分を弓の名人と思っていました。ところが弓工に良い弓を手に入れたとみせると、これは良い弓ではないと指摘されます。これをうけて太宗は次の言葉を残しました。この話は巻第一政体第二第一章にあります。

わたしは弓矢を用いて四方の敵を平定した。それなのに、弓の道理というものがわかっていなかったのだ。ましてや、わたしは天子になって日が浅いのであるから、政治の心がけをつかむには、弓を用いた経験には全く及ばない。弓でさえも道理をつかんでいなかったのであるから、まして政治はなおさらのことである。

(講談社学術文庫版『貞観政要』石見清裕訳注,p64)

この箇所で太宗は、自分は弓矢が得意であったのに、弓の選択をあやまった。知識があると思っていた弓ですらそうなのだから、ほとんど未経験の政治は何も知らないはずである、と考えたのです。だから役人を近くにおいて、その意見を聞いて民衆の様子を知るように心がけた、と『貞観政要』の続きには書いてあります。

専門家の意見を聞くことの大事さを太宗はわかっていました。謙虚さが必要なことを悟っていたのです。もともと太宗はどちらかというと豪快で自信に満ちた性格だとぼくは思います。でも良い政治を行うには、謙虚さが大事なことをわかっていたのです。

太宗のように謙虚であり続けるにはどうすれば良いでしょうか。一つは大きなハンディキャップを持って、そのハンディキャップを克服して取り返す意識です。太宗は歴史に悪い皇帝とは名を残したくはありませんでした。でも自らの兄弟を殺して皇帝になるという大きなハンディキャップを背負っていました。だからこそ謙虚になって良い政治をしく必要があったわけです。

もう一つは運命を受け入れるあきらめに近い態度です。自分はリーダーになる運命にあるのだから、贅沢ばかりはできないと思って自分に言いきかせることです。

そして最後に、周囲からはしてはいけないことを「するな」と言われる仕組みを作ることです。太宗はダメ出しのための役職である諫議大夫を新設しました。太宗はこのように自らの心がけだけではなく、自分のつくった仕組みや制度によっても自分を律しようとしたのです。

今回の記事まとめ|民衆を大事にし、謙虚でいることがリーダーには大事である

今回の『貞観政要』の太宗の話をまとめるとこう言えます。

まず部下となる人たちをないがしろにせず、偉そうにもせず、組織にとってリーダーと部下たちは一体だということを認識することが良いリーダーへの一歩です。そして誰の意見でも聞けるように仕組みを作って謙虚にふるまうこともリーダーには大事になってきます。どちらの要素もつながっている部分がありますね。そうした教訓を受けとってどう行動するかは自分次第です。

以上、今回は『貞観政要』を紐解き、良いリーダーの条件をみてきました。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 
 

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