問題が起こる前に現状を把握し、問題になりそうなことを想定することが大事|守屋洋著『兵法三十六計』を読んで

だいぶ昔に下書きした記事を公開します。
どうも、さとやんです。朝晩は暑さが和らいで来ましたが、日中はまだまだ暑い9月初旬となりました。
先日第152回人間塾in関西に参加して来ました。その際に課題本として読んだ『兵法三十六計』を読んで感じたことをここに記します。
『兵法三十六計』ときいて思い浮かぶ言葉
ぼくは「三十六計」と聞くと、中国の古典的な戦略のテンプレートを思い浮かべます。代表的な36個の戦略が本書では紹介されています。
また「三十六計逃げるにしかず」という言葉もあります。この言葉の意味するのは次のような意味です。
三十六計はもちろん大事なんだけど、それに振り回されて死んでしまっては元も子もない。敗北の際でも、生き残って次に再起できることを諦めるな、くらいの意味でしょう。中国という国は、たとえ勝負して負けても逃げて生き延びることが大事だとする価値観があります。我が国で太平洋戦争の末期、神風特別攻撃隊や回転のような兵器で命を犠牲にして戦ったこととはかなり隔たりがあるように私は感じます。
前提を疑う
上述した通り、中国ではしぶとく生き残って再起することが戦略を用いる前提としてあるのに対して、日本では最後は潔く散ることを意識しつつ、戦略を用いる側面があるのです。つまり、そもそもこの本を読む際の前提となっている立ち位置が全く違うわけです。さらにいうと、同じ日本でも戦国時代と江戸時代でも、戦略を用いると行ってもやはり前提や条件が異なってくるので、そうした縦の時間軸、通時的観点も合わせて考える必要があります。
本書を用いる前段階が一番大事
中国を代表する兵法書『孫子』は戦わずして勝つことを最良の勝ち方だと考えていますが、『三十六計』も同様に戦いを回避して勝つの最もよく、戦いが回避できない時の兵法(戦いに勝つための戦略)を書いてあるのであって、本書は争いごとの際には狡猾な戦略を率先して打つのが最良だと言ってるわけではないんです。つまり本書は戦略を記述してはいるけど、戦略を使わずに有利にことを進めることを重視している、と言っていいでしょう。
ではこの戦略を使わないで自分が勝つ、有利に進めるにはどうすればいいでしょうか。
戦わずに勝つために必要なふたつの要素
僕が考えるに戦わずに勝つために必要な要素が2つあります。一つは情報を知ること、そしてもう一つは関わる人の心理を知ることです。
情報戦と心理戦を制すると言うことが、戦わずに勝つ最高の武器となります。
戦略に至る前に勝つ
ズバリ、情報戦を制することです。敵の数や指揮官の性格、考え方、それを踏まえた敵の傾向や得意な戦い方などの情報を集め、さらには自分たちの味方の同じような情報を集めておくことで、戦わずして勝つことができる確率が高くなります。
まさしく孫子でいう「彼を知り、己を知れば百戦危うべからず」です。
そうした情報が正確であればあるほど、敵の指揮官などが考えること、取る行動を予想しやすくなります。
そうした中で相手が戦いを避ける選択肢を取るように、自分たちができることで考えていく必要があります。そのためにこのような情報をいろんな角度から集めておく必要があるのです。
どの情報を集めるかをある程度、意識して情報の対象を決めるのはとても大事です。対象となる相手とはどのような人でしょうか?例えば、自分が競争する相手、つまり戦う相手ということで伝統的には敵と呼ばれます。この敵の指揮官にあたる人物の情報を知ることが1番大事です。今だと自分たちが関わる事業に関する競合する企業の意思決定の責任者と言うことになるでしょう。
この敵の指揮官のどのような情報を知れば良いのでしょうか。もちろん、状況によって必要な情報は異なります。これを見極めることが心理戦を制する秘訣となります。
現在の企業の例で考えてみると、競合相手のリーダーが考える癖、傾向などを把握することなども考えられるかもしれません。現状、競合企業のリーダーがどのような相手にアプローチをするか、今までその競合企業の方針に則った戦略や行動をとってきたか、そうでないか、また数ある製品ジャンルの中で、特に重点的に扱っているジャンルは、何かなど、相手の行動を決定する要因となる思考の癖を解くのに、必要な情報を集めて、分析し、行動や戦略の予測を立てることができるでしょう。
上記の例は敵を考えたケースになります。実際は敵にも対象がたくさんあり、それが個人であったり、指導層のグループであったり、相手の所属する集団全体であったり、戦いとなるフィールドの地域社会の情報であったり、また国や世界にまで考慮に入れる必要があることもあるでしょう。
さらに味方の情報も必要となります。これもその時の状況によって必要な情報は異なります。どの対象のどの種類のどのレベルの情報が必要か?対象を絞り込み、さらにはその対象の中でも必要な情報の属性を考え尽くす必要あるでしょう。
ただ情報を精査する前の段階にあっては、全体像を知るために、あえて様々な情報に注意しておいた方が良い場面も多々あります。
こうした情報を集めるときに、正解はないでしょう。今のところ自分たちのリソースで活用できるものを使ってえられる情報を絞り込んで、重要性の高いと考えられるものを集めていくしかないでしょう。
こうして、敵と味方の両方の情報を知れば、戦いを避けるのに、最適な選択肢が判別できる可能性が高まるでしょう。自分の主張だけでなく、相手の求めていることを正確に把握することで、自分が譲歩できるところ、そして相手の譲歩できるところを視野に入れて、提案を下さるようになるでしょう。
だからこそ国や組織が戦略を考える前に、潰しあうだけの戦いを避けるためにどういう行動を取るべきかを考えることが大事になってきます。それに役立つための情報を集めるの最良の選択肢になると私は感じます。
心理戦を制する
後は大事なのが心理戦です。情報をしっかりと集めておくことと密接に関係しています。自分が押さえるべき人物が心理的にどう感じるかを探っておく、考えておくことが必要でしょう。
ここで言う心理戦は先に述べた情報戦の続きにあると言って良いでしょう。ほぼ全て勝敗は集めた情報によって決まります。後の残りは相手に話を持って行く際の交渉人がどう対応するかで決まるわけです。こちら側の交渉人が、自身の心理的な傾向や癖を把握し、さらにはあちら側の交渉人の心理的にどう感じるかを予想するのに大事な癖や傾向を知っておくことが大事です。
これも、孫子の「彼を知り、己を知れば百戦危うべからず」ということでしょう。
最後に
ここに書いた情報戦と心理戦を制することは、戦いを避ける上でも戦いが起こる時でも大切なのは間違いがないでしょう。
『兵法三十六計』のようなその場で取るべき戦略戦術のパターンを知っておくこともとても大事です。
しかし、特に有事が起こりそうな際に適切な情報を集めることもとても重要でしょう。
今回、この書物を読むことができて、いろんな私自身が考えていることをこの場で整理できたことがとても嬉しく、誰かが見て少しでも感じてもらうところがあるかもしれないと思い、このブログに投稿しています。
最後まで読んでいただきありがとうございました。それでは次の記事でお会いしましょう。