人文科学系、主に哲学の専門用語の解説を中心とした雑記集

インド哲学を知ろう12〜古典ヨーガ

2017/09/08
 
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どうも哲学エヴァンジェリスト高橋聡です。前回は古典サーンキヤについて見ていきました。その無神論的性質を持ちつつも、霊魂と物質の二元論は捨て去らなかったのが古典サーンキヤでした。今回は古典ヨーガについて見ましょう。

古典ヨーガ

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古典ヨーガの特徴

ヨーガは実践を特に重視します。ヨーガの実践とは通常の意識を取り払い、エクスタシーの状態である超理性的な意識状態に至って、ついに正常な人間の状態を超えて、解脱の実現ができるという実修法です。節食、節制、催眠、苦行、精神統一、呪術などがヨーガの補助手段となります。ヨーガは生き生きとした神秘体験を追い求め、滅びることない個人存在の核心の独存を追求することを特徴としますが、様々な思想的潮流はそれぞれ固有の立場からヨーガを採用しました。そして、ヨーガに独自の理論的基礎を与えようと努めました。

古典サーンキヤと結びついた古典ヨーガ

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パタンジァリの『ヨーガ・スートラ』では一段と瞑想が大事にされるとともに、形而上学が解脱の教えにより重要となりました。そして古典サーンキヤ派と結びついて、一個の哲学とみなされました。パタンジァリはヨーガの語を「心の無秩序な活動、現実化の作用、働きの死滅」と理解しました。アハンカーラとマナスを、ブッディから区別せずに、三者を一個の「心」(チッタ)で表現します。「心の活動の所産による五つのものによって、見るものは自己自身に留まる」といいます。心の活動が生み出す五つのものが解脱を妨げるのです。その五つのものとは「認識根拠」「倒錯」(=無知)「架空の知」「睡眠」「記憶」のことです。無知とは無常・不浄・苦・無我なるものについて、それぞれ恒常・清浄・楽・自我とみなすことです。「無知」と、無知が生み出す「自我の意識」(我見)「貪欲」「瞋恚」「生存欲」が合わせて五煩悩とされます。この五つの中で、最も根源的な「無知」が一切の業形成の基礎です。ヨーガの目標この五つの煩悩を正しい方法ですべてなくし、無秩序な心の活動を止滅の状態に導くことなのです。

古典ヨーガとサーンキヤ派の違いの一つが、根本原質が永遠に転変して繰り返すという教えが、古典ヨーガではより徹底されているということです。最小の実体単元である原子が存在し、「原子」の結合は絶えず変化すると考えられました。時間は単に刹那の絶えざる連続であると考えられ、これが我々の一つの流れという印象を与えているにすぎないといいます。そして原子と刹那とを含む転変説が成立しました。

将来ふりかかる苦を捨て去って、独存の状態に到達するには、自己と自己でないものとを識別する智慧が手段になると考えられました。「禁制」「勧制」「坐法」「調息」「制感」の五つの心身を準備する外的部門と「凝念」「禅定」「三昧」の三つの内的部門(真戒)の八つの部門が大事だと考えられました。真摯なヨーガ行者は智慧によって自己を独存に導きます。

二種の三昧

三昧には二種あると考えられました。有想と無想の二つの三昧です。有想三昧は四種類あるといいます。五種の粗大な元素への精神集中、次に極微の元素への精神集中、歓喜への精神集中、自我意識への精神集中の四つです。有想三昧に特徴的なことは、心の活動が静止して、心の純一な本性が優勢となって、心が禅定の対象をあるがまあに写し出すようになり、「等至」(経験内容や知覚内容を伴わない状態への到達)に至ります思惟が記憶を完全に消し去って、自己自身が空になり、語や観念が混えないものとなって、対象そのものと一致します。

無想三昧は外部の事物に支えられていません。無想三昧に到達するには「絶対の無関心」が手段です。無想三昧に潜在意識的構成力以外何も存在しない時、潜在意識の構成力は自らを完全になくし、心は根本原質に帰ります。ここで心が伴っていた霊我は独存を果たします

永遠に煩悩や業の結果などに左右されない特殊な霊我である最高神イーシュヴァラが存在しますが、パタンジァリの解脱には不可欠な存在ではありません。最高神は全智です。解脱した個々の霊我と異なって、最高神は物質界と関係を持ちます。最高神は太古の詩聖などの師だといいます。ヨーガ行者は最高神を表す神秘的音節オームを静慮して、完全な精神統一に達しなければなりません。最高神はヨーガ行者にとって解脱の助けとなります。自己を最高神に委ねることによってもまた、三昧を到達できると考えられました

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